2018年9月14日金曜日

地震後の停電生活

地域医療のススメ専攻医2年目の横田です.
4月から半年間,北海道十勝いけだ地域医療センターで研修をしています.

皆さんもご存知の通り,北海道胆振東部地震が9/6にありました.
池田町は人命に関わる被害はありませんでしたが,停電の影響で数日間はバタバタとしていました.
被災地からの声ということで報告させていただきます.

9/6午前3時過ぎ,突然の揺れで目が覚めました.最初はちょっとした地震だと思い寝ようと思いましたがなかなか強い揺れだったので起き,テレビをつけましたがつきません.ケータイをみて津波の心配のないことは確認し私は寝てしまいました.朝起きても電気はつかぬまま…これは大変と思い病院へ.

病院にはすでにたくさんの職員の方が集まっていました.地震直後から病院に向かった方が多かったようです.
2度寝してしまった自分を恥ずかしく思いました….
地震当日は非常用電源しかないため,節電しながらの外来診療(薬が足りなくなった方への5日分処方と救急対応のみ)となりました.
転倒して骨折した方や怪我をした方,自家発電を試みてガスが発生し気分が悪くなった方(おそらくCO中毒)などいましたが数名で重症な方はいませんでした.
電気がないと身体診察のほかできるのはエコーぐらいです.エコーがすぐ使えることは本当にありがたいことだと思いました.
急遽,紙カルテの対応となり不慣れな環境での外来診療となりましたが,薬剤師,看護師,放射線技師,事務,皆さんの協力で特別困った事態はありませんでした.

停電してすぐに問題になったのは透析患者さんの対応です.非常用電源を透析に使用すると消費電力が多くなってしまいます.でももしこのまま停電が続き(復旧に1週間以上かかるかもしれないとの噂もありました)透析ができなかったら命に関わる問題です.話し合いの結果,地震翌日から最小限で透析を回そうということになりました.結果として翌日には電気は復旧したため透析問題は無事解決しました.看護師さんが1人1人に連絡して安否の確認や体重管理の注意を呼びかけてくださったことが印象的でした.

もう1つ印象に残っているのは食事の問題です.冷蔵機が使用できない,物資が届かないためコンビニやスーパーから食材がなくなってしまいました.患者さんの食事提供すら危ぶまれ,急遽メニューを考えなくてはならないため栄養士さんは病院に泊まり込んで作業してくださいました.でも食事量が足りず,カップ麺などを買って食べていた患者さんもいたようです.職員の食事はもちろんなくなり,おにぎりやカップ麺を食べる日々でした.停電が解消してすぐに物流がスムーズになるわけではないので,食糧不足は数日続きました.

今回の地震で,電気の大切さが身に染みました.電気がないと日常生活のほとんど全てに支障があります.電気がなくなっても数日は困らないよう災害にむけての準備はしておくべきだと思いました.これは一般家庭でも病院でも同様です.
今回の地震が9月だったのは不幸中の幸いでした.これが真冬の季節だったらと思うとゾッとします.さらに多くの死者が出ていたことでしょう.

皆さんの病院でも災害マニュアルの見直しなどご検討いただければと思います.






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2018年9月1日土曜日

OHSUで感じた、日本との違い

みなさん、こんにちは。S4児玉です。日本はまだこんなに暑いんですね。
7,8月と2ヶ月間、オレゴン健康科学大学のfamily medicineを見学してきましたので報告します。
家庭医がたくさん!
日本とアメリカの家庭医療における一番の違いは何かと聞かれると、家庭医の数でしょうか。Kansas City で開かれたアメリカ家庭医療学会のカンファレンス(日本の夏季セミナーのようなイベント)に参加させてもらいましたが、プログラム説明のブースには全米から何百というプログラムが集まり、話を聞きにきた学生たちでごった返していました。家庭医療が進んでいないと言われる東海岸でも、大学でfamily medicine について必ず習っているし、どの州にもプログラムがあります。家庭医が多い理由はその歴史にありそうでした。米国では1970年代にはすでに家庭医療のresidencyができ始めていました。OHSUでは現在指導医をする医師はほぼ全てfamily physicianで、その中にははOHSU residencyの卒業生も多くいます。つまり、同じ境遇のレジデントを、自分がされてきたように指導する、理想的な形が完成しています。
日本では医学生の多くは家庭医、総合診療医が何かを教わらずに卒業します。ようやく若手の家庭医が増えてきたところで、多くのプログラムは指導医不足です。でも、高齢化はアメリカより早く、複雑な問題を抱える患者に対する対応に長けている家庭医はむしろ日本の方が必要とされているのではないかと感じました。

                
教育システムについて
学生教育
1年生の学生と見学した日がありました。彼女は3ヶ月以上一人のfamily physicianについて勉強していました。family medicineに興味があるため、選択期間をすべてfamily medicineに当てたそうです。患者さんのところに行って予診をとり、アセスメントとプランまで考えて医師に報告していました。これは日本では研修医1年目でやっていることでしょう。こうした臨床に即した教育が4年間提供されることもあって、こちらの研修医1年目は日本の研修医より臨床現場をよく知っているし、知識も豊富です。このシステムはマンパワーが必要なので日本では現実的ではないのかもしれませんが、座学中心、大学病院ではほとんどうしろで見ているだけの日本と差ができて当然でしょう。いきいきと楽しそうに勉強している学生の姿が印象的でした。

クラマスフォールズにあるプログラム、Cascade Eastで1週間見学
一番右のWarren先生の家にホームステイしました
レジデントの教育
水曜日の午後はdutyが免除されて勉強会に参加できます。1年目は他にも免除される時間を設けてあり、レジデントの学習の機会はたくさん取れるようにしてあります。レジデントは2週間ごとにクリニックと病院と他科研修を行き来していますが、これはアメリカの中でも少数派のやり方のようです。週1回は自分のクリニックに戻るので、4年間継続して見られる患者がいることが最大のメリットですが、クリニックと病棟両方で弾く次が発生するのでどうなのかな、と思ったりもしました。

OHSUで知り合った日本人の学生、レジデントで結成した望月会

日本の家庭医の強み
日本の方が上手なこともたくさんあるように感じました。以下箇条書きにして見ました。
・家庭医療のコアについては僕らの方が学ぶ機会が多い
・高齢者が多く、家庭医的なNarrativeを意識した診療がfitしやすい。
・病院やクリニックへの物理的・金銭的アクセスが良いので、比較的短期間での外来フォローをしやすい
・クリニックの規模が小さいので、個人的な継続性は維持しやすい。(専攻医は別ですが、、)
・担当する患者が多いので、数で経験を積んでいる
・保険のシステムがわかりやすい
日本では家庭医・総合診療医がまだ新しいためか、家庭医療のコアについて熱く語れる指導医は日本の方が多いのでは?と感じました。
そうした知識を学び、後輩たちに伝えていくことはとても重要ですね。

湯沢に来てくれた時から交流が続いているJason
野球に2回、サッカーに1回 連れてってくれました
この日は地元サッカーチームTimbersの試合
 これから何をするのか
望月先生との秘密対談
アメリカで1980年代に起きていたことと、今の日本の総合診療で起きていることは非常に近いと感じました。そして、日本の総合診療は発展途上で、これから日本にあったように形を変えていくのだということを再認識しました。日本はアメリカに比べて総合診療医が少ない、指導医の数が少ない、診療範囲が狭いなど様々な疑問がすっきりとしました。分化しつつある日本の総合診療に関わっていくことはとてもやりがいがあるなと感じました。今後僕たちが何をすべきなのか、自分なりに考えたことは2つあります。一つは学生・研修医に総合診療の面白さを伝えられる医師になって、総合診療医を増やすこと。もう一つは専門家との良好なコミュニケーションで総合診療医がいかに効率よく全体を見られるのかを知ってもらうこと、ひいては質の高い研究で政策にも影響すること、、、。話が大きくなりましたが、一人では全部できないので、みんなで作っていくしかないですね。

また、僕らが日常的に参考にしている情報、論文や2次資料の多くがアメリカの情報をもとにしています。エビデンスが生まれた場所の文化や医療の背景を知った上で活用すると、また少し深みが出てくるのかなと感じました。

書き終えてから、藤沼先生がとてもタイムリーな内容に触れている記事を見つけました。興味がある方は読んで見てください。100倍重みがあります。


 
ポートランドには小規模の
brewery(ビール醸造所)がたくさん
毎日のように行きました
iPhoneをバスに踏まれたり、水道管が詰まって下水が風呂から沸き上がったり、バス停の目の前にまさかの駐車で罰金くらったり色々ありましたが、充実した2ヶ月を送ることができました。
こうした機会を作っていただいた協会スタッフの皆様、OHSUスタッフの皆様に感謝いたします。














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2018年8月12日日曜日

夏期セミナーとは

はじめまして&こんにちは。専攻医3年目の吉岡です。

前回ブログを担当してからちょうど1年が経ちました。2017年10月から2018年6月まで、千葉県浦安市の東京ベイ・浦安市川医療センターで腎臓内科→総合内科→ICUと研修してきました。そこでの研修は私にとってかけがえのない日々だったのですが、語り出すと止まらないのでまた機会があれば…。

7月からは奈良県奈良市にある都祁(つげ)診療所に来ています。180度セッティングの異なる環境で毎日追われながらも、充実した日々を過ごしています。

さて、今回は先日神奈川県湯河原で行われた夏期セミナーについてお伝えします。

会場になっているホテルは、実は静岡県熱海市。
ホテルの前に流れる川にかかる橋が県境になっています。
■夏期セミナーとは何ぞや??
正式名称『学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナー』というそうです(今知った)。医学生だけでなく、看護学生、薬学生といった医療系学生も参加でき、医師は原則5年目までの若手が対象です。
それぞれのセッションは、たとえば『診療所救急』『妊産婦と家庭医との関わり方』『介護にまつわる費用とは』など様々なテーマがあり、グループワークが中心のレクチャーが土・日・月と3日間も繰り広げられます。ポスターセッションなんかもあるようです(概要を知らな過ぎてごめんなさい)。
中には一番の目玉、特別企画もあり、今年は30回の節目ということで、あの松村真司先生が『家庭医のカテイ』という未来を語るセッションもありました。

■『ススメ』メンバーでセッションを出しました
今回の夏期セミナーでは我ら『地域医療のススメ』から2セッションも採択されました。『お母さんお助け隊』と『Travel medicine入門』です。私はお母さんお助け隊のひとりとして参加しました。
ススメの研修は基本的に全国津々浦々の施設で行われるため、同じ場所に集まって会議をすることが難しいのですが、Web会議システムを駆使してメンバーで議論を重ねてきました。

■Women's healthと家庭医
日本での女性診療においては、主に妊産婦では産婦人科(+乳児健診では小児科)、悪性腫瘍などでは婦人科が、それぞれ人生のポイント毎に担当します。しかし、その間の隙間を埋める「なんでもないとき」をケアするのは、実は家庭医がいちばんマッチしているのではないか、と考えられています。まさに『ゆりかごから墓場まで』。
今回のセッションでは、『授乳中のお母さんから風邪でつらいから薬を飲みたいと言われたら?』『産後うつかもしれないお母さんにはどう接したらいいの?』というテーマで、レクチャーとそれに基づくロールプレイを行いました。

■若者のちから
かくいう私は、ロールプレイがそこまで得意ではありません。この業界では何かとロールプレイやグループワークをさせられることが多くて正直苦痛です(本当にごめんなさい…)。学生さんたちが盛り上がってくれるのか、当日まではとても不安でした。
しかし、さすがは意識高い系のみなさん。アイスブレイク前から自己紹介をし始め、すでにフリートークで盛り上がっていました。私の最大のミッションであったアイスブレイクも、まるで『スベらない話』が如く異常なまでの盛り上がりを見せました。
その後も参加者の皆さんに大いに助けられ、ファシリテーター側もとてもポジティブな余韻に浸ることができた楽しい時間でした。

■特別企画に参加して
実は、ススメのセッション以外にも、縁あって特別企画にお誘いいただきファシリテーターとして参加してきました。家庭医の『カテイ』、それはつまり、過程だったり家庭だったり…。今思い描くビジョンと、実際に研修医・専攻医になってみての現実とのギャップ、そしてこれからのことを考える時間でした。
大学を卒業してから2年後の自分、5年後の自分、10年後、そして20年後はどうなっていたい?――夢を語るなんて、最近していなかったなぁ。素直にまっすぐに語る若者たちがとても真摯で、とてもまぶしかったです。
興味深かったのは、男性の方が『いくつまでに結婚して、子どもつくって、子どもが小学校卒業くらいになったら夫婦で離島に行く』とか、家族像について具体的に考えている方が多かったことです。女性の方は『初期研修終わるまでには絶対結婚したい!!!』という方が多くて切実なんだなぁと痛感しました。
やはり、医師と言ってもひとりの人間。家庭、ライフワークバランスもキャリアには重要な要素ですよね。そういったことを引け目を感じずに語り合える場って素敵だなと思いました。
反対に私は、これまで特に深く考えることもなく、出会った人々に導かれるように、今の道を進んでいます。いわゆる行き当たりばったり系です。10年後はおろか1ヶ月先のことすらままならないのですが、今回若者たちと向き合って、少し先の未来を、夢を描いてみてもいいのかなぁと思えました。

■まとめ
全然まとまりのない、そしてあまり具体的なことは良くわからないブログになってしまいました。今回夏期セミナーに参加するにあたり、『正直、夏休みにこんなところに来て、東医体とか行かない学生とは絶対に仲良くなれない』とかイキがったことを思っていた私ですが、若者のまっすぐさに触れ、もう少し家庭医/総合診療医としての将来について前向きに考えようかな…と思えた、そして、またセッションやってみてもいいかも…とポジティブな気持ちを持てた1日でした。

今回のセッションにご協力・ご指導いただいたすべての皆さんに厚く御礼申し上げます。


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2018年6月29日金曜日

アメリカ研修報告

本文
現在ポートランドに1ヶ月の研修で越させていただいています。地域医療のススメS4の松本です。
なんとか2週間が過ぎようとしています。
OHSUがあるポートランドですが、バラが有名な街でいろんな種類のバラを見ることが可能です。夏の気温が高くなりすぎなければ9月くらいまでバラを楽しむことができるそうです。



現地でサポートしてくださるBenさんに滝とBBQ(この日は生憎の天気だったので室内です)のお誘いを頂いたり、写真を忘れていたのでないのですが、山下先生のご自宅にお呼ばれしたりと楽しい日々です。



日本との違い
1.白衣を着ていない医師も多いのに驚かされました。目に余るような格好でなければとくに問題視されないようです。
2.外来と病棟が完全に分離されている。Hospitalistは病棟だけということで、病棟医は入院診療に、外来医は外来だけに集中できるという点では良いシステムのように思えます。
3.平均在院日数が3.5日!話には聞いていましたがFamily Medicineでもだいたい2~4日で退院していくのは衝撃的でした。
4.帝王切開や精管切除術がFamily Medicineでも普通に行うというのも興味深いです。
 精管切除は日本ではほとんど聞いたことがなかったので、これも衝撃でした。
5.ホスピスケアは在宅が主で病棟があるのはポートランドで1箇所しかないと。日本よりもホスピスケアが盛んだと聞いていたのでこれは意外でした。どうも国からのペイが悪くて赤字になってしまうので、ということだそうです。その点では日本の将来像かもしれません。
6.アメリカの介護でも大きく在宅と施設に分かれるそうです。今回自宅の余った部屋で介護するお家には行く機会がありませんでしたが、Assist Livingという施設(写真)
Nursing Homeに行く機会がありました。Assisting Livingは富裕層向けの施設でまるでホテルのようで、食事もフランス料理とワインとか…格差がすごいです。
7.無保険者や低所得者用のセーフティネット診療所がいくつかあり、いくつかの薬剤は無料でもらえる。ただし、受診だけで25$必要な模様。
8.Walk-in-clinicという予約不要な診療所もあるがこちらは医師ではなくナース・プラクティショナーが診療に当たる。急性期疾患や軽症外傷などの治療を行う。立ち位置としては日本の開業医のような存在でした。

エンタープライズでのホームステイ
 エンタープライズはオレゴン州の北東部に位置する人口2000人程度の街で、ワローワ郡の中心になっています。ワローワ郡は面積が8,100平方km(だいたい兵庫県と同じ面積)7,000人しか住んでいません。

 牧畜が盛んな地域で、バッファローも飼育され実際に食べることもできます。味は脂肪が少なくてとても美味しいです。もしエンタープライズに行く機会があればぜひ食べてみてください。ちなみに風景はさながら西部劇の世界というかまさに西部劇に出てくる地域です。
 このエンタープライズにはWinding Waters Clinicという診療所があります。Wallowa Memorial Hospitalと一体的に運営されています。ここでも病棟・救急と外来に分かれています。Hospitalist11名、Clinicians5名+ナース・プラクティショナー1名で、救急当番は月に35回、午前6時から翌日の午前6時までの24時間当直になるそうです。
 夏休みは大体2週間~1ヶ月ほど取れるようです。羨ましい。
 普段の診療は7時~19時の診療時間になっており時々、20時位まで残業もあるようですが概ね午後6時までには帰っているようです。
 また、隊員の際にCHW (Community Health Worker)という医療と自宅とをつなぐ役割の方がいると。日本で言えばソーシャルワーカーかケアマネージャーみたいな立場でしょうか。このCHWはヘルスプロモーションでも重要な役割をもっているようで、日本でも使えないかなと考えています。
 エンタープライズではPowers夫妻宅にホームステイさせていただきました。旦那さんは診療所のCEOであるNicさん、奥さんが診療所のDrであるLiz先生です。どちらもエンタープライズの出身ではなくNicさんはボストン出身。Liz先生はミシガン州出身だそうです。Liz先生が交換留学でフィンランドに行った際にサウナ好きになって作ったとのことです。私もサウナをご一緒させていただきました。
 当初は英語が不得手なことに不安がありましたが、なんとかつたない英語とグーグル翻訳で意思疎通を行うことができました。百聞は一見にしかずの通りで、聞いていたアメリカの医療のイメージと実際に見たものでは全く違うように感じました。

 最後にお世話になった皆様に感謝申し上げます。おかげさまで素晴らしい研修になりました。




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神々の集う島

ススメ専攻医3年目,卒後5年目の海永千怜です.
東京都の離島,伊豆諸島神津島診療所に勤務した報告です.

人口1800人超の村の唯一の診療所(医師は2人)という環境でした.前情報も少なくどんなところなんだろうと期待と不安を感じながら,プロペラ機で到着しました.
結果として言葉に言い尽くせない,楽しくきつい診療所漬けの日々を過ごすことができ,あっという間の3か月間でした.もっと長くいたい,診療所の皆ともっと一緒に働きたい,島の人々や島の風土にもっと入っていきたい,とても心動かされた日々でした.

この3か月で
・日々の外来は,午前で30-50人前後.do処方を繰り返さないように,サマリーをみてなあなあになっていたことや,ポリファーマシーに介入したり,困っていることを聞くようにしたところ,外来は長くなり,結果としてDr同士の振り返りや紙カルテ書きは夜遅くまで続くことになりましたが...全然苦にはなりませんでした.患者さんの方も熱心に話を聞いてくれてありがたいといって,待ってくれる人が多かったです(それでも改善点はメリハリをつけることだったと思います...).
・患者さんの多くは日々の仕事(漁業,農業)からくる腰痛,肩こりに困っていて,Dr2人で,日々解剖教科書を開き,生食筋膜リリース,ブロック注射,リハビリ介入など,あれこれ試しました.看護師さんやPTさんなどのスタッフさんたちも,新しい処置や試みに柔軟に対応してくれました.患者さんの痛みが和らいで,感謝されると本当に嬉しいものでした.

これまでの研修ではどうしても内科寄り,内服加療が主でしたが,整形外科的な動作分析をしたり,ケガの傷を縫ったり,粉瘤を切除したり,皮膚の診察をしたり(水痘が流行していました),意外と子供も多いので小児の診察をしたりということが絶え間なくランダムにくるので,その都度勉強したりDr同士で相談して解決策を探していく,という日々がとても刺激的でした.

・ヘリ搬送は3件ありました.自分でt-PAをやることも初めてでした.離島医療という特殊な状況であり,必要ならばなんでもやる,というスタンスであり,受け入れ病院の先生方も,遠隔読影を利用しつつ,的確な指示をくれますし,自分だけではなく医師は2人いますのでとにかく協力してやりました.

・最近少なくなった減圧症も経験しました.神津島診療所には実はかなり初期段階に設置された減圧症の再圧タンクがあります.アナログな再圧タンクです.素潜り漁が特に盛んだった10-20年以上前,夏場は連日,減圧症の症状になった人が,再圧タンクに並んで入っていたとのことでした.海草などの漁が盛んで,漁師さんは日に4-5回,操業限界時間まで何度も往復して素潜りをして,減圧症にしょっちゅうかかっており,大学研究者が,このままではいかんと意見書を出したほどでした.再圧タンク設置前は,患者さんは毛布をにくるまり,海中の一定の水深のところに酸素を吸いながら潜り続け,一定の時間を体が冷たくなるまで過ごし,海中で自力で再圧タンクを再現して,症状を緩和していたのだそうです.
再圧タンクを動かせるのは,講習をうけた漁協の方だけで,タンク稼働時の2-5時間,つきっきりで,無休無給で操作します.なかには尿瓶もあり,弁当や水分を供給できる窓もあり,広かったです.
診療所は丘の上にあるので,減圧症症状になっても,浜辺からの標高の高さにより診療所に来るまでにさらに患者さんは苦しくなってしまいます.もし,操作できる方が用事で島にいなかったら,患者さんはヘリ搬送しなければならず,そうすると症状は余計に悪くなります.そういった歴史と経過も,村の人から教えてもらいました.


・島の文化も垣間見られました.
神津島は在宅看取り率が高い島(40-50%)です.皆,自分の家で死ぬのだということが当然で,家族も最後は看取るのだという考えが根付いています.訪問看護や訪問介護の体制はありません.ぎりぎりまで施設で過ごし,食事が取れなくなってきたり,島で対応可能な治療でも奏功せず衰弱してきたりしたときに,「そろそろおうちかもね」と関係者が絶妙なタイミングで,家に連れて帰る段取りをつけます.点滴や酸素投与はしません.それでも患者さんは苦しむ様子なく,安静な呼吸の仕方で,出すものを出し切って,生まれ育ったなじみのある家に帰ってから2-7日程度で静かに,美しく亡くなられていきました.とても自然な,当たり前な,命の終わり方を見せていただきました.

・ある日,痛ましい事故がありました.
そういう情報はすぐに村中に知られるので,村人は「コンパクはだいじょうぶか」と心配していました.コンパク=魂魄のことです.人が自宅でない場所で亡くなってしまったとき,亡くなった場所に取り残されてしまう「たましい」を弔うために,島の「ばぁ」を呼んで,その場所で関係者が念仏を唱え,祈りをささげる独特な風習のことでした.宗教とは違う,別れの儀式でした.
草履,紙に包んだ米と塩,何かの草の枝,お駄賃としての60円を包み,現場に関係者で練り歩き,線香をたいて,祈りました.ばぁが「ここに残るんじゃないよ」と「たましい」に言って,紫の布に広げられた小物たちを米一粒も落とさずに包み,家族に渡し,あの世に持っていく旅の品として,一緒に棺に入れるのです.
とても神聖でおだやかな空間でした.魂魄を送り出す島の「ばぁ」の仕事,昔は人手がたくさんあったその仕事も,後継ぎはいません.

神々が集う(=神集→神津)ことが所以といわれる島.いたるところに,神様を祭った石像があります.年1回,漁師さんや漁協の方たちが,海に向かって祭壇を作って,海で亡くなった人に対して祈りつつ,海からあがった魚や貝達に感謝する儀式もやっているのだそうです.そういう風習が根付いているって素晴らしいと思います.

たった3か月ですが,あらゆることを経験しいろんなことを感じられた日々でした.
皆さんによくしていただきました.こんな出会いや経験ができたのも協会の制度のおかげだと思います.ぜひまた派遣させていただきたいです.



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2018年6月26日火曜日

学会は面白い

本文
岐阜県西部の山間地にある揖斐郡北西部地域医療センターに勤務している奥村幸治です。

61617日に三重県で開かれた日本プライマリ・ケア連合学会学術大会に参加しました。私がこれまで学会に抱いていたイメージは「行かないといけなそうなのでなんとなく行く。いろいろ小難しい話を聞くが、いつの間にか寝てしまう」というものでした。
このページをご覧くださっている方の中にも同じようなイメージの方はいないでしょうか。

しっかり話を聞いてみると、実に興味深い話し合いがなされていることに気づきました。印象に残ったのは大学病院、小病院、離島の病院に勤務する総合診療医が、それぞれの立場で大切にしているクリニカルパール(短く、回りくどくない臨床上のアドバイス)について語り合うものでした。
いくつかの例を申し上げれば、/悪寒の程度によって菌血症のリスクが変わる。患者が震えていたら医者が震えろ/上級医と言い争え、でも従え。看護師や患者とは言い争うな、でも曲げるな/迷ったときは家族と思え/…などなど。
 医学生や初期研修医の方に向けた「カンファレンスで賢そうにみえるパール」(?)もありました。カンファレンスで意見を求められたときに、「これは…悪性腫瘍を否定しないといけませんね」と言うと賢くみえるそうですよ? コツは「これは…」の後に 「ため」をつくることだそうです。

 学会にはポスター発表というものがあります。伝えたい内容をいわゆるポスターにまとめ、現場にいる人たちの前(十数人であることが多いです)で、10分間ほどで発表します。
 私の上司は今回、このポスター発表を2回しました。初日は地域医療研修で成長するための研修のコツについて、研修生に行ったアンケートを分析した結果を紹介し、二日目は地域たたき上げのベテラン看護師の持つノウハウを次の世代に引き継ぐために、当院で1年間かけて行った取り組みを紹介しました。二日目は当院の誇る若手、ベテラン看護師6人が応援に訪れ、上司の発表を盛り上げてくれました。
 以上、学会の報告でした! 


※写真は学会で撮影した揖斐関係者の集合写真です。







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2018年6月14日木曜日

はじめまして~都祁での日々~

本文
みなさんこんにちは、初めまして。この春から「地域医療のススメ」に参加させて頂きました、S1の田中航と申します。
 後期研修が始まった今年の4月から奈良市立都祁診療所で研修しています。都祁診療所は奈良県の東の山間部にある診療所です。山間部といっても近くには名阪国道が通っており、奈良市中央部(奈良公園らへん)から車で30分程度と、アクセスは意外といいです。
 医師は私と所長の西村正大先生2人、看護師さんは3人体制で日々診療を行っています。主な業務内容は朝と夜の外来、訪問診療、予防接種、禁煙外来、学校健診…などなど多岐にわたります。診療所に来たばかりの4月は初期研修医の頃全く経験したことのないものにあたって悪戦苦闘したり、前任が優秀な佐々木貫太郎先生だったということもあってプレッシャーに悩まされたりすることもありましたが、新鮮な体験が多く毎日が勉強となり、少し慣れてきたかなと思っている今では基本的には楽しく過ごしています。
 往診した帰りに必ずリポビタンDをくれる患者さんがいて夜診も頑張ろうと思ったり、禁煙外来初回で「タバコがないと死ぬ」とまで言っていた人が「ごはんが美味しくなった、死なんでよかった」と言ってくれて嬉しかったり、学校健診で小学生が診察の前に自己紹介してくれて癒されたりなど、診療所に来てまだ日は浅いですが診療所ならではの体験で印象に残ったことは多く、非常に充実しています。
 さらに毎日のようにその日の振り返りがあり、西村先生や佐々木先生からフィードバックを頂けるので着実に知識が増えていくのを実感します。また、診療所でいつも注文しているお昼ご飯のお弁当もおいしいです。一言で言えば人や環境に恵まれています。恵まれすぎなんじゃないかと少し怖さを感じる今日このごろです。
 今月で都祁診療所での研修は終わり、来月からは市立奈良病院で救急研修をさせて頂く予定です。幅広い分野を研修することができるのも「地域医療のススメ」の魅力的な点だと思います。診療所研修が終わるのは正直かなり名残惜しいですが、プログラムは4年間もありますのでいつかまた戻ってこれたらなと思います。
 都祁診療所でしか味わえないことがここにはあります。残りわずかとなりましたが、最後まで楽しく、有意義な研修を送っていきたいです。
都祁診療所です。保健センターが併設しています。
診療所入口にはツバメが巣を作っていました。
近くには大型の道の駅があります。温泉もついています(カラオケあり)



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