2018年11月4日日曜日

神津島での研修

 地域医療のススメ S2田所と申します.
6月にS3の海永先生もブログに書いていた,神々の集う島,神津島診療所に私も7-9月の3ヶ月間勤務しました.それについての報告をさせて頂きます.
島の概要や,文化については海永先生の投稿を見ていただければ分かると思いますので割愛させて頂きます.

私の行った7-9月は,夏真っ盛りで,かなりの人数の観光客が訪れる季節です.神津島の主産業としては,漁業,そして民宿業であるため,島民にとっても繁忙期である3ヶ月です.
神津島の綺麗な海
 そのため,午前で30-50人前後の島民の診察+観光客の受診があり,かなり大変でした.紙カルテに記載する暇もないくらいであり,全て勤務が終わるのが午前3-4時になることもありました.
また,専門医がおらず,文字通り何でも診る,総合診療を体現していることから,今までは他科にお願いしているような処置,診察を行う毎日であり,大変でしたが,その分自分のスキル向上になったと強く思います.

具体的には,眼科で使用する細隙灯の使用,骨折の固定や,肩こり,腰痛に対する筋膜リリース,ステロイド局注,皮膚生検,KOH, 粉瘤や良性腫瘍の手術,縫合,漢方などです.

特に縫合については,夏であるため軽装であったり,観光客が多いことから(神津島は急勾配な道が多く,バイクでの移動する観光客が多かったため),件数が多く,ほぼ毎日1-2件は縫合していました.
中には,損傷がひどく50針近く縫合した症例や,畳針を踏んでしまって5mm幅,4-5cm針が足底内に迷入してしまい摘出した例,腱断裂まで至っており,Kessler法を用いて腱縫合をした例など,様々な症例がありました.
個人的に一番勉強になったのは漢方でした.もう一人の医師が漢方を得意としていたことから,診察や処方などを教えてもらいながら,診療に取り入れました.

不定愁訴の患者さんに対して,アプローチが難しいことがこれまでにも多々あり,マネジメントの困難さを痛感しておりましたが,実際漢方を使用することで,慢性の下痢や,全身倦怠感,のぼせ,ほてりなど,改善を認める患者さんも多く,「ありがとう」と喜んでいる姿をみると本当に嬉しくなりました.

また,ヘリ搬送の件数も多く,肝膿瘍のpresepsis,特発性血気胸,上部消化管出血,脳梗塞,CPA ROSC後など,多岐に渡りました.
特に脳梗塞については,断崖絶壁で体動困難になってしまったため,どうしても診療所に運ぶことが出来ずに,現場に医師,看護師が向かって,診察,初期治療,搬送の適応を決めるという今までに前例のない症例であり,現場での迅速な判断の難しさを実感した症例でした.

その他搬送の適応になるか,ならないか,狭間の症例も多かったですが,後方病院の専門医の先生の意見を伺いながら,なんとか,医師2人でやりきることが出来ました.

それ以外にも,透析のマネジメントや,特別養護老人ホームへの週1回の往診など,自分の力で責任を持って行っていかなければいけない状況でしたが,看護師さんたちを含めたスタッフの方々の力添えにより,乗り切れたと思います.

島民の方々も,皆優しく,中には私を指名して受診をしてくれたり,魚や染物,編み物,野菜などを差し入れしてくれたり,温かく受け入れてくれました.
そんな中での毎日であったため,3ヶ月はあっという間に過ぎ去って行き,本当に名残惜しかったです.

離島での医療というなかなか経験できないようなことをさせていただいて,本当に感謝しております.ありがとうございました.
大好きな患者さんが,私への餞別にと作ってくれた千羽鶴.残念なことに,彼女の形見となってしまいましたが,大切に今でも家に飾っています.


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2018年10月19日金曜日

地域医療のススメ 秋の合同ミーティング


地域医療のススメ専攻医1年目の畠中です。
今回は地域医療のススメ 秋の合同ミーティングに出席したときのことについて書かせていただきます。

初日に関しては、事前に解いて提出していた家庭医療知識問題の総括や振り返りがあり、その後にレクチャーが2本ありました。
知識問題については解いた際も非常に難問揃いと感じましたが、解説を聞いても、「そんなん解けるかい。」と思う問題が多く、家庭医療やります=風邪胃腸炎etcみたいな簡単な医療をやるってことでしょ?みたいな風潮があるように思いますが、ここまで要求されるのかと家庭医療の深みを感じた次第です。ちなみに解説があった正答率3割以下の10問については0点でした。

続いてレクチャーですが、1本目はゲストでいらしたOHSU Family medicine のresidentの先生から「addiction medicine」についてお話いただきました。
米では麻薬のオーバードーズで毎年42000人死者が出ているというのは中々衝撃的で日米の違いを大きく感じるところでした。日本では生涯で麻薬を試してしまう人口が1.2%であるのに対し、米では42%と非常に極ありふれた問題で家庭医が抑えるべき分野ということですが、日本もいずれそうなるのでしょうか。
お話の中では法整備の違いによるところがあるだろう、との話だったので日本ではそうならないと信じたいところです。




2本目のレクチャーはリハビリについてで、総合診療では嚥下性肺炎や脳梗塞、廃用症候群などでお馴染みの分野ですが、非常にわかりやすく新たな発見の多い講義でした。例えば嚥下性肺炎でいえば、なんとなくSBT/ABPC、きざみとろみ、リハ処方とセットのようにしてしまっているところですが、近年抗菌薬を投与しない治療なども提唱されており、もっと理解を深めないといけないと感じています。疾患、機能障害、ハンディキャップの流れやポジショニングの話などはなるほどと思う点も多く、明日からの診療に確実に違いを与えてくれる内容でした。私が勤務している東京北医療センターでもレクチャーは多数ありますが、今回講義してくださったのは他院のリハビリ科の先生で、ミーティングの場でこうした講義を受けられるのはススメという共同体ならではの強みだと思います。

2日目は南郷先生、岡田先生によるポートフォリオについての講義と個別面談がありました。総合診療科の専攻医はポートフォリオの提出が義務になりますが、まだ手付かずの状況で不安を感じていたところで大変ありがたい講義でした。何をどう書けばいいのか、どこに注意すればいいのか、などいつも通り痒いところに手が届く解説でS1は必聴の内容だったと思います。個別面談では、これまでの印象歴な症例についてお話したところ、ポートフォリオに関連して聴取すべき内容などご助言いただくことができました。今後はポートフォリオを意識して診療にあたるのも必要なのかな、と考える機会となりました。普段一緒に働いていない先生方にも手厚く指導いただけるのは本当にありがたいことです。次回は冬の合同ミーティングが京都でありますが、それまでにもっと指導いただける材料を増やしていきたいなと思いました。



私は今回で2回目の合同ミーティングでしたが、他院でのレジデントと交流したり、指導医の先生方が自分のこともよくみて考えてくださっていることがわかって非常に有意義な会でした。
今年度よりススメの一員となり、半年が過ぎました。毎日あっという間に過ぎていて振り返ることも中々できていない状況ですが、今後の研修も頑張って参りますので皆様何卒よろしくお願い致します。




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2018年9月14日金曜日

地震後の停電生活

地域医療のススメ専攻医2年目の横田です.
4月から半年間,北海道十勝いけだ地域医療センターで研修をしています.

皆さんもご存知の通り,北海道胆振東部地震が9/6にありました.
池田町は人命に関わる被害はありませんでしたが,停電の影響で数日間はバタバタとしていました.
被災地からの声ということで報告させていただきます.

9/6午前3時過ぎ,突然の揺れで目が覚めました.最初はちょっとした地震だと思い寝ようと思いましたがなかなか強い揺れだったので起き,テレビをつけましたがつきません.ケータイをみて津波の心配のないことは確認し私は寝てしまいました.朝起きても電気はつかぬまま…これは大変と思い病院へ.

病院にはすでにたくさんの職員の方が集まっていました.地震直後から病院に向かった方が多かったようです.
2度寝してしまった自分を恥ずかしく思いました….
地震当日は非常用電源しかないため,節電しながらの外来診療(薬が足りなくなった方への5日分処方と救急対応のみ)となりました.
転倒して骨折した方や怪我をした方,自家発電を試みてガスが発生し気分が悪くなった方(おそらくCO中毒)などいましたが数名で重症な方はいませんでした.
電気がないと身体診察のほかできるのはエコーぐらいです.エコーがすぐ使えることは本当にありがたいことだと思いました.
急遽,紙カルテの対応となり不慣れな環境での外来診療となりましたが,薬剤師,看護師,放射線技師,事務,皆さんの協力で特別困った事態はありませんでした.

停電してすぐに問題になったのは透析患者さんの対応です.非常用電源を透析に使用すると消費電力が多くなってしまいます.でももしこのまま停電が続き(復旧に1週間以上かかるかもしれないとの噂もありました)透析ができなかったら命に関わる問題です.話し合いの結果,地震翌日から最小限で透析を回そうということになりました.結果として翌日には電気は復旧したため透析問題は無事解決しました.看護師さんが1人1人に連絡して安否の確認や体重管理の注意を呼びかけてくださったことが印象的でした.

もう1つ印象に残っているのは食事の問題です.冷蔵機が使用できない,物資が届かないためコンビニやスーパーから食材がなくなってしまいました.患者さんの食事提供すら危ぶまれ,急遽メニューを考えなくてはならないため栄養士さんは病院に泊まり込んで作業してくださいました.でも食事量が足りず,カップ麺などを買って食べていた患者さんもいたようです.職員の食事はもちろんなくなり,おにぎりやカップ麺を食べる日々でした.停電が解消してすぐに物流がスムーズになるわけではないので,食糧不足は数日続きました.

今回の地震で,電気の大切さが身に染みました.電気がないと日常生活のほとんど全てに支障があります.電気がなくなっても数日は困らないよう災害にむけての準備はしておくべきだと思いました.これは一般家庭でも病院でも同様です.
今回の地震が9月だったのは不幸中の幸いでした.これが真冬の季節だったらと思うとゾッとします.さらに多くの死者が出ていたことでしょう.

皆さんの病院でも災害マニュアルの見直しなどご検討いただければと思います.






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2018年9月1日土曜日

OHSUで感じた、日本との違い

みなさん、こんにちは。S4児玉です。日本はまだこんなに暑いんですね。
7,8月と2ヶ月間、オレゴン健康科学大学のfamily medicineを見学してきましたので報告します。
家庭医がたくさん!
日本とアメリカの家庭医療における一番の違いは何かと聞かれると、家庭医の数でしょうか。Kansas City で開かれたアメリカ家庭医療学会のカンファレンス(日本の夏季セミナーのようなイベント)に参加させてもらいましたが、プログラム説明のブースには全米から何百というプログラムが集まり、話を聞きにきた学生たちでごった返していました。家庭医療が進んでいないと言われる東海岸でも、大学でfamily medicine について必ず習っているし、どの州にもプログラムがあります。家庭医が多い理由はその歴史にありそうでした。米国では1970年代にはすでに家庭医療のresidencyができ始めていました。OHSUでは現在指導医をする医師はほぼ全てfamily physicianで、その中にははOHSU residencyの卒業生も多くいます。つまり、同じ境遇のレジデントを、自分がされてきたように指導する、理想的な形が完成しています。
日本では医学生の多くは家庭医、総合診療医が何かを教わらずに卒業します。ようやく若手の家庭医が増えてきたところで、多くのプログラムは指導医不足です。でも、高齢化はアメリカより早く、複雑な問題を抱える患者に対する対応に長けている家庭医はむしろ日本の方が必要とされているのではないかと感じました。

                
教育システムについて
学生教育
1年生の学生と見学した日がありました。彼女は3ヶ月以上一人のfamily physicianについて勉強していました。family medicineに興味があるため、選択期間をすべてfamily medicineに当てたそうです。患者さんのところに行って予診をとり、アセスメントとプランまで考えて医師に報告していました。これは日本では研修医1年目でやっていることでしょう。こうした臨床に即した教育が4年間提供されることもあって、こちらの研修医1年目は日本の研修医より臨床現場をよく知っているし、知識も豊富です。このシステムはマンパワーが必要なので日本では現実的ではないのかもしれませんが、座学中心、大学病院ではほとんどうしろで見ているだけの日本と差ができて当然でしょう。いきいきと楽しそうに勉強している学生の姿が印象的でした。

クラマスフォールズにあるプログラム、Cascade Eastで1週間見学
一番右のWarren先生の家にホームステイしました
レジデントの教育
水曜日の午後はdutyが免除されて勉強会に参加できます。1年目は他にも免除される時間を設けてあり、レジデントの学習の機会はたくさん取れるようにしてあります。レジデントは2週間ごとにクリニックと病院と他科研修を行き来していますが、これはアメリカの中でも少数派のやり方のようです。週1回は自分のクリニックに戻るので、4年間継続して見られる患者がいることが最大のメリットですが、クリニックと病棟両方で弾く次が発生するのでどうなのかな、と思ったりもしました。

OHSUで知り合った日本人の学生、レジデントで結成した望月会

日本の家庭医の強み
日本の方が上手なこともたくさんあるように感じました。以下箇条書きにして見ました。
・家庭医療のコアについては僕らの方が学ぶ機会が多い
・高齢者が多く、家庭医的なNarrativeを意識した診療がfitしやすい。
・病院やクリニックへの物理的・金銭的アクセスが良いので、比較的短期間での外来フォローをしやすい
・クリニックの規模が小さいので、個人的な継続性は維持しやすい。(専攻医は別ですが、、)
・担当する患者が多いので、数で経験を積んでいる
・保険のシステムがわかりやすい
日本では家庭医・総合診療医がまだ新しいためか、家庭医療のコアについて熱く語れる指導医は日本の方が多いのでは?と感じました。
そうした知識を学び、後輩たちに伝えていくことはとても重要ですね。

湯沢に来てくれた時から交流が続いているJason
野球に2回、サッカーに1回 連れてってくれました
この日は地元サッカーチームTimbersの試合
 これから何をするのか
望月先生との秘密対談
アメリカで1980年代に起きていたことと、今の日本の総合診療で起きていることは非常に近いと感じました。そして、日本の総合診療は発展途上で、これから日本にあったように形を変えていくのだということを再認識しました。日本はアメリカに比べて総合診療医が少ない、指導医の数が少ない、診療範囲が狭いなど様々な疑問がすっきりとしました。分化しつつある日本の総合診療に関わっていくことはとてもやりがいがあるなと感じました。今後僕たちが何をすべきなのか、自分なりに考えたことは2つあります。一つは学生・研修医に総合診療の面白さを伝えられる医師になって、総合診療医を増やすこと。もう一つは専門家との良好なコミュニケーションで総合診療医がいかに効率よく全体を見られるのかを知ってもらうこと、ひいては質の高い研究で政策にも影響すること、、、。話が大きくなりましたが、一人では全部できないので、みんなで作っていくしかないですね。

また、僕らが日常的に参考にしている情報、論文や2次資料の多くがアメリカの情報をもとにしています。エビデンスが生まれた場所の文化や医療の背景を知った上で活用すると、また少し深みが出てくるのかなと感じました。

書き終えてから、藤沼先生がとてもタイムリーな内容に触れている記事を見つけました。興味がある方は読んで見てください。100倍重みがあります。


 
ポートランドには小規模の
brewery(ビール醸造所)がたくさん
毎日のように行きました
iPhoneをバスに踏まれたり、水道管が詰まって下水が風呂から沸き上がったり、バス停の目の前にまさかの駐車で罰金くらったり色々ありましたが、充実した2ヶ月を送ることができました。
こうした機会を作っていただいた協会スタッフの皆様、OHSUスタッフの皆様に感謝いたします。














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2018年8月12日日曜日

夏期セミナーとは

はじめまして&こんにちは。専攻医3年目の吉岡です。

前回ブログを担当してからちょうど1年が経ちました。2017年10月から2018年6月まで、千葉県浦安市の東京ベイ・浦安市川医療センターで腎臓内科→総合内科→ICUと研修してきました。そこでの研修は私にとってかけがえのない日々だったのですが、語り出すと止まらないのでまた機会があれば…。

7月からは奈良県奈良市にある都祁(つげ)診療所に来ています。180度セッティングの異なる環境で毎日追われながらも、充実した日々を過ごしています。

さて、今回は先日神奈川県湯河原で行われた夏期セミナーについてお伝えします。

会場になっているホテルは、実は静岡県熱海市。
ホテルの前に流れる川にかかる橋が県境になっています。
■夏期セミナーとは何ぞや??
正式名称『学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナー』というそうです(今知った)。医学生だけでなく、看護学生、薬学生といった医療系学生も参加でき、医師は原則5年目までの若手が対象です。
それぞれのセッションは、たとえば『診療所救急』『妊産婦と家庭医との関わり方』『介護にまつわる費用とは』など様々なテーマがあり、グループワークが中心のレクチャーが土・日・月と3日間も繰り広げられます。ポスターセッションなんかもあるようです(概要を知らな過ぎてごめんなさい)。
中には一番の目玉、特別企画もあり、今年は30回の節目ということで、あの松村真司先生が『家庭医のカテイ』という未来を語るセッションもありました。

■『ススメ』メンバーでセッションを出しました
今回の夏期セミナーでは我ら『地域医療のススメ』から2セッションも採択されました。『お母さんお助け隊』と『Travel medicine入門』です。私はお母さんお助け隊のひとりとして参加しました。
ススメの研修は基本的に全国津々浦々の施設で行われるため、同じ場所に集まって会議をすることが難しいのですが、Web会議システムを駆使してメンバーで議論を重ねてきました。

■Women's healthと家庭医
日本での女性診療においては、主に妊産婦では産婦人科(+乳児健診では小児科)、悪性腫瘍などでは婦人科が、それぞれ人生のポイント毎に担当します。しかし、その間の隙間を埋める「なんでもないとき」をケアするのは、実は家庭医がいちばんマッチしているのではないか、と考えられています。まさに『ゆりかごから墓場まで』。
今回のセッションでは、『授乳中のお母さんから風邪でつらいから薬を飲みたいと言われたら?』『産後うつかもしれないお母さんにはどう接したらいいの?』というテーマで、レクチャーとそれに基づくロールプレイを行いました。

■若者のちから
かくいう私は、ロールプレイがそこまで得意ではありません。この業界では何かとロールプレイやグループワークをさせられることが多くて正直苦痛です(本当にごめんなさい…)。学生さんたちが盛り上がってくれるのか、当日まではとても不安でした。
しかし、さすがは意識高い系のみなさん。アイスブレイク前から自己紹介をし始め、すでにフリートークで盛り上がっていました。私の最大のミッションであったアイスブレイクも、まるで『スベらない話』が如く異常なまでの盛り上がりを見せました。
その後も参加者の皆さんに大いに助けられ、ファシリテーター側もとてもポジティブな余韻に浸ることができた楽しい時間でした。

■特別企画に参加して
実は、ススメのセッション以外にも、縁あって特別企画にお誘いいただきファシリテーターとして参加してきました。家庭医の『カテイ』、それはつまり、過程だったり家庭だったり…。今思い描くビジョンと、実際に研修医・専攻医になってみての現実とのギャップ、そしてこれからのことを考える時間でした。
大学を卒業してから2年後の自分、5年後の自分、10年後、そして20年後はどうなっていたい?――夢を語るなんて、最近していなかったなぁ。素直にまっすぐに語る若者たちがとても真摯で、とてもまぶしかったです。
興味深かったのは、男性の方が『いくつまでに結婚して、子どもつくって、子どもが小学校卒業くらいになったら夫婦で離島に行く』とか、家族像について具体的に考えている方が多かったことです。女性の方は『初期研修終わるまでには絶対結婚したい!!!』という方が多くて切実なんだなぁと痛感しました。
やはり、医師と言ってもひとりの人間。家庭、ライフワークバランスもキャリアには重要な要素ですよね。そういったことを引け目を感じずに語り合える場って素敵だなと思いました。
反対に私は、これまで特に深く考えることもなく、出会った人々に導かれるように、今の道を進んでいます。いわゆる行き当たりばったり系です。10年後はおろか1ヶ月先のことすらままならないのですが、今回若者たちと向き合って、少し先の未来を、夢を描いてみてもいいのかなぁと思えました。

■まとめ
全然まとまりのない、そしてあまり具体的なことは良くわからないブログになってしまいました。今回夏期セミナーに参加するにあたり、『正直、夏休みにこんなところに来て、東医体とか行かない学生とは絶対に仲良くなれない』とかイキがったことを思っていた私ですが、若者のまっすぐさに触れ、もう少し家庭医/総合診療医としての将来について前向きに考えようかな…と思えた、そして、またセッションやってみてもいいかも…とポジティブな気持ちを持てた1日でした。

今回のセッションにご協力・ご指導いただいたすべての皆さんに厚く御礼申し上げます。


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2018年6月29日金曜日

アメリカ研修報告

本文
現在ポートランドに1ヶ月の研修で越させていただいています。地域医療のススメS4の松本です。
なんとか2週間が過ぎようとしています。
OHSUがあるポートランドですが、バラが有名な街でいろんな種類のバラを見ることが可能です。夏の気温が高くなりすぎなければ9月くらいまでバラを楽しむことができるそうです。



現地でサポートしてくださるBenさんに滝とBBQ(この日は生憎の天気だったので室内です)のお誘いを頂いたり、写真を忘れていたのでないのですが、山下先生のご自宅にお呼ばれしたりと楽しい日々です。



日本との違い
1.白衣を着ていない医師も多いのに驚かされました。目に余るような格好でなければとくに問題視されないようです。
2.外来と病棟が完全に分離されている。Hospitalistは病棟だけということで、病棟医は入院診療に、外来医は外来だけに集中できるという点では良いシステムのように思えます。
3.平均在院日数が3.5日!話には聞いていましたがFamily Medicineでもだいたい2~4日で退院していくのは衝撃的でした。
4.帝王切開や精管切除術がFamily Medicineでも普通に行うというのも興味深いです。
 精管切除は日本ではほとんど聞いたことがなかったので、これも衝撃でした。
5.ホスピスケアは在宅が主で病棟があるのはポートランドで1箇所しかないと。日本よりもホスピスケアが盛んだと聞いていたのでこれは意外でした。どうも国からのペイが悪くて赤字になってしまうので、ということだそうです。その点では日本の将来像かもしれません。
6.アメリカの介護でも大きく在宅と施設に分かれるそうです。今回自宅の余った部屋で介護するお家には行く機会がありませんでしたが、Assist Livingという施設(写真)
Nursing Homeに行く機会がありました。Assisting Livingは富裕層向けの施設でまるでホテルのようで、食事もフランス料理とワインとか…格差がすごいです。
7.無保険者や低所得者用のセーフティネット診療所がいくつかあり、いくつかの薬剤は無料でもらえる。ただし、受診だけで25$必要な模様。
8.Walk-in-clinicという予約不要な診療所もあるがこちらは医師ではなくナース・プラクティショナーが診療に当たる。急性期疾患や軽症外傷などの治療を行う。立ち位置としては日本の開業医のような存在でした。

エンタープライズでのホームステイ
 エンタープライズはオレゴン州の北東部に位置する人口2000人程度の街で、ワローワ郡の中心になっています。ワローワ郡は面積が8,100平方km(だいたい兵庫県と同じ面積)7,000人しか住んでいません。

 牧畜が盛んな地域で、バッファローも飼育され実際に食べることもできます。味は脂肪が少なくてとても美味しいです。もしエンタープライズに行く機会があればぜひ食べてみてください。ちなみに風景はさながら西部劇の世界というかまさに西部劇に出てくる地域です。
 このエンタープライズにはWinding Waters Clinicという診療所があります。Wallowa Memorial Hospitalと一体的に運営されています。ここでも病棟・救急と外来に分かれています。Hospitalist11名、Clinicians5名+ナース・プラクティショナー1名で、救急当番は月に35回、午前6時から翌日の午前6時までの24時間当直になるそうです。
 夏休みは大体2週間~1ヶ月ほど取れるようです。羨ましい。
 普段の診療は7時~19時の診療時間になっており時々、20時位まで残業もあるようですが概ね午後6時までには帰っているようです。
 また、隊員の際にCHW (Community Health Worker)という医療と自宅とをつなぐ役割の方がいると。日本で言えばソーシャルワーカーかケアマネージャーみたいな立場でしょうか。このCHWはヘルスプロモーションでも重要な役割をもっているようで、日本でも使えないかなと考えています。
 エンタープライズではPowers夫妻宅にホームステイさせていただきました。旦那さんは診療所のCEOであるNicさん、奥さんが診療所のDrであるLiz先生です。どちらもエンタープライズの出身ではなくNicさんはボストン出身。Liz先生はミシガン州出身だそうです。Liz先生が交換留学でフィンランドに行った際にサウナ好きになって作ったとのことです。私もサウナをご一緒させていただきました。
 当初は英語が不得手なことに不安がありましたが、なんとかつたない英語とグーグル翻訳で意思疎通を行うことができました。百聞は一見にしかずの通りで、聞いていたアメリカの医療のイメージと実際に見たものでは全く違うように感じました。

 最後にお世話になった皆様に感謝申し上げます。おかげさまで素晴らしい研修になりました。




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