2021年4月12日月曜日

十勝いけだ地域医療センターの研修報告

初めまして,東京北医療センター 総合診療科 専攻医2年目の川幡 翔太郎と申します.2020年7月から2021年6月までの1年間,十勝いけだ地域医療センターで研修を行なっています.現在私がいる池田町は,北海道の中央にある十勝地方に属しています.”町”であるものの,東京23区の6割程度の面積があり非常に広大な土地を有しています.しかし,一方で人口は僅か7000人で,道を歩いていても人ほとんど出会いません.

着任してから彼此8ヶ月間にわたり,外来や訪問診療を担当させていただきました.外来は短時間に定期受診と初心が入り混じり,当初は患者さんを待たせてしまったり,検査の出し忘れがあったりとなかなか反省が多かったですが,次第に慣れてきました.訪問診療に関しては,雪国の生活を四季を伺うことができて非常に興味深かったです.入院患者さんは落ち着いている方が多いですが,コロナ禍で面会謝絶とならざるを得ないお看取りに関して非常に悩みました.自分が下した決断がどのような結果を産むのか最後まで見届けることは,正直辛い面がありました医師として成長できた気がします.
仕事以外では,休日に流氷を見に行ったり,ワカサギ釣りをしたり,-25℃の気温を活かして①バナナで釘打ち,②濡れタオルを振って凍らせる,③シャボン玉を凍らせるの雪国トライアスロン(勝手に命名)をやりました.小さい頃から憧れていた北海道の冬を少しずつですが満喫しております.

これからCOVID-19のワクチン接種など,心配事は絶えないですがあと4ヶ月間頑張ろうと思います.

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2020年11月5日木曜日

地域医療のススメ 短期地域医療研修(小櫃診療所)レポート

10月に専門研修プログラム「地域医療のススメ」にて実施した、専攻医1年目が対象の短期地域医療研修から早速レポートを頂きました。
実際に現場へ赴いて体験された、生の報告をご覧頂ければ幸いです。

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初めまして、専攻医1年目の吉村 翼と申します。東京北医療センターにて総合診療科をローテート中ですが、初期研修をJADECOM外にて行った専攻医には、JADECOM内の診療所にて1週間地域研修を体験するという機会があり、今回研修に参加させて頂きました。

研修先は千葉県君津市の地域医療を支えている小櫃診療所です。君津市は房総半島のやや南部に位置し、東京湾アクアラインの千葉県側の玄関である木更津市のすぐ南に隣接する市です。

千葉県君津市。チーバくんのおへそあたりです。


小櫃地区は君津市の中でも南部に位置し、市の中心部までは20分程度、アクアライン利用で都心へも1時間程度と、実はアクセスも良好な土地です。地域研修で地方へ行かなくてはいけないけど、家族の事情もあって出来るだけ都心に近いところで研修を…なんて方にもおすすめです!(残念ながら、現在は総合診療Ⅰの該当施設ではありませんが、今後そこを目指していくとのことです)
近隣にはスーパーやドラッグストアもあり、意外と生活には困りません。

診療所の前の道路より。地域はどこもこんな感じと言えばこんな感じですね。


診療所は、元病院であった建物の1階部分を利用しています。研修は私が施設史上初めてとのことで、1週間と短期だったこともあり、取り急ぎ院内の休憩室に泊まらせて頂きましたが、元病院だったということもあり、夜には天然のお化け屋敷へと変貌を遂げておりました…笑
医師2人、看護師3人、事務3人で日常診療を行っています。地域の診療所ではどこも同様かもしれませんが、皆さんとても優しく、至れり尽くせりな状況で雰囲気よく研修させて頂きました。患者さんとも距離感が近く、特に古参の看護師さんはほとんどの方と顔見知りで、笑って冗談を言い合っており、和やかな空気を実感しました。

診療所の外観。元病院ですが、2階は現在使用されていません。


小櫃診療所は、2020年度より協会に加入した診療所です。前年度は週3回のみ開いていたとのことで、今年度開始地点での患者さんは少なかったですが、徐々に増えてきており、現在1日あたり30-40人程度といったところでしょうか。基本的には外来診療を行いつつ、1コマだけ訪問診療が入っているという状況です。

1週間と非常に短い期間ですし、コンセプトも「JADECOM内での地域医療を研修してくる」というものでしたので、基本的に見学メインで研修させて頂きましたが、他の先生の外来見学というのは学生実習以来であり、非常に新鮮でした。東京北では予約外来も担当しておりますが、初期研修自体には全く経験しなかったということもあり、どのように予約外来を進めていけばよいのかのイメージがはっきり無いままに、ずるずると今に至っていました。
ここで一つのロールモデルを目にしたような気持ちであり、東京北に戻ってからも、隙間を見つけて他の先生方の外来見学を行いたいなと思っています。

待合室


研修を経て、一つでは言い表せないぐらい色々なことを感じました。標榜は内科であっても、小児科や皮膚科等にまで対応する幅広さが求められること、病院は治療がメインになりますが、診療所は予防がメインになるということ、予防接種やがん検診を間隔なども含めてどの程度勧めていくべきかということ、高齢運転の必要性、隣人を診療所へ送っていくなどの地域住民同士の助け合い、15km離れた病院へ受診するのは特別でないということ、今なお職業において中心を占める第一次産業 (だからこそ自宅での介護が可能なケースも多いのでしょうか)、管理者としての診療所の運営や、(JADECOMに所属していれば本部が設定してくれるのであまり考える必要はありませんが)職員への福利厚生…… その他にも、これまでの診療では触れたことの無いような、考えたことの無いような、様々な事象に触れることが出来ました。

1週間と短い期間ではありましたが、小櫃診療所のみなさま、貴重な研修をさせていただきまして、誠にありがとうございました!


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2020年10月20日火曜日

WEBで研修体験企画「研修医日記」(月間地域医学2019年7月号より)










こんにちは.専攻医3年目の羽角勇紀と申します.所属は東京北医療センターで,現在は2019年4月から青森県の東通村診療所で総合診療Ⅰ研修をしています.

もともと山形県の出身で,小さいころは秋田,仙台,福島と住み,山形に戻り大学は福島,初期研修は山形に戻り……とずっと東北をウロウロしており,生粋の東北人です.後期研修を選ぶ時,人生で一度は,と東京に出てきたところですが,結局地域研修は東北地方でしており,逃れられないようです.

さて,原稿作成時まだ5月なので折り返しにも到達していない段階ではありますが,現時点での研修について書きたいと思います.
東通村診療所は青森県下北半島にある19床の有床診療所です.
外来は基本的には内科外来,他に1週間に1度の整形外科外来を設けていますが,実際は境界が明瞭にあるわけではなく,内科外来においても肩痛や腰痛など整形領域の相談もあります.ほかに,少ないながら小児の患者さんもいらっしゃいますが,実際はほとんど高齢者の方が多いです.朝の受付は争奪戦で,7時前から待っていたりして,当直明けに寝ぼけた姿で院内を歩いているとびっくりすることも.いろいろな集落から集まってくるので,診療所への来院方法も,自家用車もあればバスで集落ごとにまとまって来院したり,私にとっては新鮮です.帰りのバスに間に合わない,とせかされることも(笑).
常時10数人の方が入院していて,あくまで診療所なので設備という点では病院には劣りますが,肺炎,心不全,脳梗塞,糖尿病,間質性肺炎,胃潰瘍出血,リウマチ性多発筋痛症……など,コモンディジーズを中心にバラエティに富んでいます.どうしても外来が中心になるので病棟業務に割くことができる時間は少ないですが,「診療所=外来」というイメージがある前提から考えれば,事前に考えていたより意外と経験できると感じています.
医師住宅に住んでます.診療所から走れば1分
説明を追加医師住宅に住んでます.診療所から走れば1分








訪問診療は週で20数件あり,初期研修以来初めての経験です.まず,本当にいろいろな家
があるなぁと,医師としてというより個人的に興味深い印象を受けることも多いです.多世代住宅で豪華な家,老々介護で日々の生活でさえ大変そうだと感じる家,犬や猫がたくさん出迎えてくれる家,床がなぜか粘着質な家…….普段,病院で勤務していると見えない,「退院後の生活」に触れることができます.改めて感じることは,医師だけでは何も上手くいかず,訪問看護,訪問薬剤指導,包括,そして家族の協力なくしてはなさないということです.急性期病院にいると入院日数短縮のために,得てして退院を急がすことになりがち(もちろんこれはこれで重要)ですが,そういった点である程度ゆとりがあるのは診療所の良いところです.
ほかに,隣接している老健の回診や学校健診,予防接種なども行っています.
診療所に来て,特に素晴らしいと感じたのは,週に1回開催されている包括カンファレン
スです.診療所医師,看護師,訪問・老健・地域包括・居宅・リハビリスタッフ,薬局薬剤師が一同に会して,それぞれがそれぞれの持ち場,視点から患者さんの情報共有を行います.「〇〇さんが……」との名前だけで話が通じており,まだ2ヵ月弱しかいない自分では話についていけていません.プライマリケアの5つの理念を大切に実践している診療所での研修はこれからも学ぶ点がたくさんありそうです.
こどもの保育園入園式も参加できました〔近くにありいつでも入園可能(多分)〕.



残り4ヵ月間,充実した研修を送りたいと思います.休みの日の観光も.
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2020年8月14日金曜日

WEBで研修体験企画「研修医日記」(月間地域医学2019年6月号より)

病院見学など直接現場に出向く機会が少なくなってしまった中、少しでも研修の雰囲気を感じて貰えれば、という思いから、WEBで研修体感企画として「研修医日記」の掲載を致します。地域医療振興協会が発行する情報誌、「月刊地域医学」のバックナンバーより、不定期に投稿致します。(※掲載の情報などは当時のものとなっております)

2019年度で東京ベイ・浦安市川医療センターの総合内科プログラム3年目かつ「地域医療のススメ」プログラム2年目になりました.去年の5月から「地域医療のススメ」プログラムも並行して所属しています.新専門医制度が始まって2年たち,「総合診療科」は「内科」とは別個の専門科として位置付けられました.私が初期研修を終えて後期研修先を決める時は「新専門医制度が始まる」と言われ,新制度の研修について説明会がそこここでされながらも結局延期されたのでした.

「よきかかりつけ医」「身近で頼れるお医者さん」を夢みる私は総合診療科を専攻しようと思っていましたが,内科の経験を積んでおきたくて東京ベイの総合内科で後期研修を始めました.3年間の内科プログラムの2年目の4月の面談で,「家庭医療,総合診療の道を進むつもりなら今から総合内科研修しながら『地域医療のススメ』プログラムとかけもちすればよい」とご提案いただき,あれよあれよという間にススメプログラムにも所属することになりました.基本的には総合内科研修を遂行中で,ススメの総合診療専門研修プログラムのうちで病棟診療の6ヵ月を総合研修期間として数えてもらっています.

東京ベイの総合内科プログラムでは3ヵ月ごとに内科と他の科をローテートします.年間6ヵ月間を内科,3ヵ月間を地域研修(市立大村市民病院,県立志摩病院,伊東市民病院,西吾妻福祉病院のいずれか),残りの3ヵ月間は学年によって各科(循環器内科,消化器内科,腎臓内分泌糖尿病内科,集中治療科,救急科,etc. )が組み合わされて研修します.地域研修として派遣された病院では,内科医として病棟,外来,救急診療を担います.私は大村市民病院と伊東市民病院に行きました.大村はうまい魚と嬉野温泉が,伊東は毎日入れる温泉と多種多様な症状の方が来る救急外来が印象的でした.どちらも3ヵ月だけなのに病院の皆さんのおかげで愛着が深まりました.
ススメプログラムに所属してから,ススメの合同ミーティングやテレビ会議にも参加させてもらったり,ポートフォリオを細々と作ったりしています.臨床倫理4分割表であるとか,外来診療とか,内科と総合診療で共通な部分もありますが,BPSモデルとか行動変容とかヘルスプロモーションといった分野は総合診療ならではの考え方でとても勉強になります.













「なんで内科に来ちゃったの?」と反語的に訊かれることが少なからずありますが,私は総合内科で研修して良かったと思っています.東京ベイの内科では内科部長の平岡栄治先生から良き医師の6 competencies(P a t i e n t c a r e / M e d i c a l k n o w l e d g e / P r o f e s i o n a l i s m / I n t e r p e r s o n a l a n d Communication Skills / Practice-Based Learning and Improvement / System based practice)を叩き込まれます.総合診療派の先生の中には「内科は病める人でなく疾患をみる」と思っている先生がいるような気がしますが,医学的な要素だけでは良い診療にならないと教わっています.総合内科も総合診療も,違うのは診療する場の違いであって,患
者さんのために一番良いゴールを目指して治療するのは変わりないと,当然のことながら感じています.
初期研修病院のハートの熱いMSWが「各スタッフが専門性を発揮して連携をとるのがチーム医療であり,さらにお互いを助けあって患者さんを支えられるのが“理想的な”チーム医療だ」と言っていました.医師としての専門性を高めていくために,皆さんから刺激を受けながらimprovementしていきたいと思います.これからもよろしくお願いします.

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2020年7月31日金曜日

本州最果ての地にて

20207月 地域医療のススメ3年目 濱近草平

青森県の北東の端っこ、東通村の診療所での研修が10ヶ月経ちました。これを書いている今日726日の最高気温は19℃、夜は寒いくらいで、冷房なんて全く不要です。四国育ちの僕には初めての、涼しい夏を過ごしています。

 東通村は下北半島の北東に位置し、津軽海峡と太平洋の両方に面しています。村の面積は前任地の奈良市とほぼ同じですが、村内に信号機は2個、コンビニは1軒しかありません。一番近い空港、新幹線の駅までどちらも車をそこそこ飛ばしても2時間弱かかります。
人口は6000人ほど、高齢化率は30%を超えています。村の大半は山林と原野で、信号もないのでドライブはめちゃくちゃ気持ちいいです。第一次産業、特に漁業が盛んで、診療所の患者さんの中にも漁師さんがたくさんいます。
 看護師さん(ご実家が漁師)からの差し入れのホタテ。

日頃の業務は毎日の外来、病棟(19床)、併設の老健の管理、訪問診療となります。冬季には各地区に出向いてインフルエンザの予防接種を行ったり、春と秋には村に各一つの小学校、こども園での内科健診を行ったりもします。
 想像していたよりかなり忙しいな、というのが最初の印象でした。今はコロナの影響で処方日数を少し伸ばしたりしたこともありやや減りましたが、1日の外来患者は70人程度、インフルエンザの時期には100人を超えます。よほどの重症で隣のむつ市の病院に搬送されない限りは、救急車もコンスタントにやってきます。村内に他に医療機関はなく、また地理的に隣町まで通院するのが困難な高齢者が多いため、文字通り、村の人々にとって頼みの綱です。病棟の業務は急性期と慢性期の両方の役割を担っており、肺炎や尿路感染症、心不全の悪化などの治療、大腿骨頸部骨折などで他院で手術を受けた方のリハビリ、そして自宅での生活が困難になった高齢者の環境調整がそれぞれ3分の1ずつといった所です。
 救急や急性期治療という点ではこの1年で自分の能力はさほど上がってはいないと思います(勉強不足のせいですが、、、)反面、これまで全くやっていなかった慢性期外来を毎日行うことで、高血圧や糖尿病、健診後の治療方針決定などをかなりのボリュームで経験することができました。また、これまではソーシャルワーカーに任せてしまっていた退院調整に深く関わり、介護保険の仕組みや老健、特養、有料老人ホームといった施設の特徴にも詳しくなることができました。
 何より財産になったのは、一人の患者さんにこれまでになかったくらい何度も何度も会えることです。訪問診療で山を走り、川を渡り、海を眺めながら美しい森を抜け、患者さんに会いに行く時、ああ、地域で働くっていうのはこういうことなんだな、と実感します。各ご家庭のワンちゃん、ネコちゃんの名前もすっかり憶えました。遠い道のりを訪問する時、この村で生きていくということは、われわれの診療所を頼りとすることなんだな、と思わずにはいられません。限られた医療資源に不満をいうのは簡単なのですが、ここで生きていく、ここで死ぬ、と決めた方々に自分ができることは、医療資源を改善することも必要ですが、それ以上に、限られた薬を上手く使い、限られた技術を磨き、村の人々が望む人生をサポートすること、それが10ヶ月をこの美しい村で過ごした僕の気持ちです。もちろんその中には高次医療機関に紹介することも含まれるので、適切な医療を適切なタイミングで提供する勘を鈍らせないようにしなければなりません。送るべきなのか、送らないべきなのか、日々悩みますが、必ずうちの診療所に帰ってこられるように環境を整えるようにしています。送りっぱなしにしないのが東通村診療所の素敵な所です。
 最後に、当所所長川原田先生に教えてもらった言葉をご紹介します。
 「地域医療に必要なのは、まず態度、次に技術、次に知識」
怠惰な僕としては、愛想よく振る舞うことに集中して勉強不足にならないように、この言葉を都合よく解釈しないように心がけています(笑)あと2ヶ月でここを離れるのが本当に寂しいですが、11日をしっかり味わいながら、残りの日々、村のみなさんのために尽くそうと思います。

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2020年7月10日金曜日

WEBで研修体感企画「研修医日記」(月間地域医学2019年4月号より)

病院見学など直接現場に出向く機会が少なくなってしまった中、少しでも研修の雰囲気を感じて貰えれば、という思いから、WEBで研修体感企画として「研修医日記」の掲載を致します。地域医療振興協会が発行する情報誌、「月刊地域医学」のバックナンバーより、不定期に投稿致します。(※掲載の情報などは当時のものとなっております)



2018年4月より「地域医療のススメ」の総合診療プログラムで研修しています,専攻医1年目の氷渡柊と申します.2018年4月 から12月まで東京北医療センター(以下,東京北)の総合診療科で, 2019年1月から3月までは東京北の小児科で研修させていただ きました.同年4月からは再び東京北の総合診療科で研修させていただく予定です. まず当院での総合診療科での研修ですが,週1回の初診・予約外来と病棟管理が業務の中心であり,それらに加えて各種カンファレンスや上級医によるレクチャー,医学論文の抄読会を毎週のルーチンとしてこなしています.当科では専攻医・あるいは初期研修医といった学年の若い医師が診療や教育の中心を担っていますが,指導医や学年が上の専攻医のバックアップ体制がしっかりしており不要なストレスを感じず自信をもって業務を行っています. また現在は少し余裕も生まれ,微力ではありますが初期研修医など後輩医師の指導に携わる機会も増えてきました.

 さてここからは現在私が関わるプロジェクトについて一部ご紹介します.専攻医として1年が経過しようとする中,東京北の総合診療科では人事の影響から来年度の大幅な診療体制の変化を余儀なくされました.この状況をわれわれは総合診療科の転換期と位置づけ,今後のさらなる診療の質の向上とスタッフ・レジデントのやりがい・満足度向上のため,組織改革を推し進めるべく日々科内でカンファレンスを重ねています.そして改革の指揮をとる指導医のもとで,私を含めた専攻医が中心となりその議論に参加しています.



 プロジェクトの方針として,まず総合診療科として自分たちが目指す総合的な方向性を共有ビジョンとして打ち出し,それを元に各論的な戦略を組み立てていきます.この方法論は組織の変化に対しての成長戦略における重要な要素で,組織が常にしなやかに前進するために世界的にも広く行われているようです. 共有ビジョンは,当科が大切にする「和気あいあい」「biomedical」「バランス」という3要素を含むものにしたいと考えました. 「和気あいあい」には働きやすさ・助け合う という意味が,「biomedical」には広義の知識と技術という意味があります.その上で東京北総合診療科の強みである患者の個別性・ 医療関係者間・患者が置かれた地域など全体でのバランス感覚を持つことを「バランス」と表 現しました.「biomedical」という肉食の部分を芯に持ちつつも,全体の「バランス」を取ることができるという草食の部分で覆い,かつ暖かくツンツンしていない「和気あいあい」感がロールキャベツという単語に比喩されるのでは,という意見がありました.これに科内全員で前向きにコンセンサスを得られ,われわれは「ロールキャベツ系総診である」という共有ビジョンが完成しました.

現在はこの共有ビジョンを元に,当科の成長戦略を議論する「学習する組織」と,対外的な マーケティング方法を模索する「ブランディング」の2グループに分かれ,各々が戦略を議論しています.東京北総合診療科の大きな転換期に組織改革の重要な役割を担うことで,自分も科の一員として活動していると改めて実感し,またそれが日々の業務に対するモチベーションにもなっています.来年度も東京北での勤務が決まり,これからも総合診療科という組織とともに自分自身もさらに高めていければよいと考えています.まだまだ至らない部分もありますが,今後ともよろしくお願い申し上げます

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2020年7月7日火曜日

WEBで研修体感企画「研修医日記」(月間地域医学2018年12月号より)

病院見学など直接現場を感じる機会が少なくなってしまった中、少しでも研修の雰囲気を感じて貰えれば、という思いから、WEBで研修体感企画として「研修医日記」の掲載を致します。地域医療振興協会が発行する情報誌、「月刊地域医学」のバックナンバーより、基本的に毎週火曜日、金曜日に掲載する予定です。
(※掲載の情報などは当時のものとなっております)


ススメ専攻医3年目になりました,吉岡です.前回から約2年の歳月が流れました.これまでをざっと振り返っておくと,2016年12月から小児科研修のため茨城県石岡市で3ヵ月過ごした後,古巣である東京北医療センター総合診療科に凱旋(?)し,その後台東病院で一般病棟・回復期病棟・療養病棟・老人保健施設と総合的に高齢者医療を学びました.
そして,これまでに経験したことのない診療科を回りたいと思い,2017年10月から意を決して東京ベイ・浦安市川医療センターへ再び乗り込み,腎臓内科→総合内科 →ICUと研修させていただきました.2018年7月からは奈良市立都祁診療所に移り,現在に至ります.
 旧都祁村にあたるこのまちは奈良県の北に位置し,『奈良のシベリア』とも言われています.実際に2月ころには雪が降り数日は積もるそうです.人口約5,500人のうち実際にかかりつけであるのは10%程度で,ふもとの天理市や隣の宇陀市といった周辺の病院に通院している患者さんも少なくありません.
一方で,例えばがんのターミナルで通院ができなくなった患者さんが在宅医療へ移行する際の受け皿という大切な役割があり,かなり頼りにされている印象です. 私が診療所で研修を行うのは後期研修医になってからは初めてのことです.日々の業務は外来と訪問診療,予防接種や乳児健診, 有料老人ホームや特別養護老人ホームへの定期診察と多岐にわたり,週に3回は17 ~ 19時までの夜間診察もあるため,意外に忙しいことに驚きました.最近は訪問件数も増えてきており,スケジュールのやりくりに苦慮しているところでもありますが,それだけニーズがあるということなのでやりがいがあります. また,直前まで東京ベイのICUにいたこともあり,180°以上真逆 のセッティングにはじめは戸惑うこともしばしばありましたし, 正直に言えば今でも慣れません.診療所にはCTやMRIはありませんし,検査技師さんもいません.血液ガス分析もできません.緊急対応が必要そうな患者さんが不意打ちで訪れたときは,最低限の採血とレントゲンとエコーを駆使して頑張るしかありません.そうしている時間さえ惜しいときもあります.家で診られるか?今からふもとの病院に自家用車で行ってもらうか?救急搬送するか? ・・・・・・病院にいたときよりもずっと,緊急性や重症度を客観的に評価することの大切さ, 難しさを今更ながら痛感しています.

セッティングの違いといえば,在宅医療においては『引き算の医療』なのかなと思うことがあります.医学的には妥当なこと,必 要な検査や治療が受けられるべき状況にあっても,本人や家族がそれらを望まない場合もあります.実際に,20年以上も頸髄症の術後後遺症に悩まされ徐々に屋内歩行もままならなくなってしまった70代男性が,1~2ヵ月の経過で食思不振と体重減少を来したため,家族から往診依頼がありました.私たちは消化管悪性腫瘍を疑い検査受診は医学的に妥当だと考えました.しかし本人はこれまでの医療不信から絶対に受診はしないという強い思いがあり, 家族と何度も話し合った末,自宅で看取るという方針に至りました.これが本当に正しいのかは分かりません.しかし,ここで私たちの意思決定を助けてくれたのは,東京ベイで日々学んでいたAdvance Care Planningをはじめとする臨床倫理の考え方でした.家族にとってはつらい選択であったかもしれません.私もとても苦しかったです.ただ,最期は自宅で穏やかに亡くなり,家族の方が「後悔はない」とお話ししてくださったのが救いでした.
これまで病院で学んできたことをどう診療所の医療に落とし込んでいくかが,今後の私の課題です. 初めての関西・奈良ライフをもっと謳歌しながら,残りの診療所研修を楽しんでいきたいと思います

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