2020年11月5日木曜日

地域医療のススメ 短期地域医療研修(小櫃診療所)レポート

10月に専門研修プログラム「地域医療のススメ」にて実施した、専攻医1年目が対象の短期地域医療研修から早速レポートを頂きました。
実際に現場へ赴いて体験された、生の報告をご覧頂ければ幸いです。

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初めまして、専攻医1年目の吉村 翼と申します。東京北医療センターにて総合診療科をローテート中ですが、初期研修をJADECOM外にて行った専攻医には、JADECOM内の診療所にて1週間地域研修を体験するという機会があり、今回研修に参加させて頂きました。

研修先は千葉県君津市の地域医療を支えている小櫃診療所です。君津市は房総半島のやや南部に位置し、東京湾アクアラインの千葉県側の玄関である木更津市のすぐ南に隣接する市です。

千葉県君津市。チーバくんのおへそあたりです。


小櫃地区は君津市の中でも南部に位置し、市の中心部までは20分程度、アクアライン利用で都心へも1時間程度と、実はアクセスも良好な土地です。地域研修で地方へ行かなくてはいけないけど、家族の事情もあって出来るだけ都心に近いところで研修を…なんて方にもおすすめです!(残念ながら、現在は総合診療Ⅰの該当施設ではありませんが、今後そこを目指していくとのことです)
近隣にはスーパーやドラッグストアもあり、意外と生活には困りません。

診療所の前の道路より。地域はどこもこんな感じと言えばこんな感じですね。


診療所は、元病院であった建物の1階部分を利用しています。研修は私が施設史上初めてとのことで、1週間と短期だったこともあり、取り急ぎ院内の休憩室に泊まらせて頂きましたが、元病院だったということもあり、夜には天然のお化け屋敷へと変貌を遂げておりました…笑
医師2人、看護師3人、事務3人で日常診療を行っています。地域の診療所ではどこも同様かもしれませんが、皆さんとても優しく、至れり尽くせりな状況で雰囲気よく研修させて頂きました。患者さんとも距離感が近く、特に古参の看護師さんはほとんどの方と顔見知りで、笑って冗談を言い合っており、和やかな空気を実感しました。

診療所の外観。元病院ですが、2階は現在使用されていません。


小櫃診療所は、2020年度より協会に加入した診療所です。前年度は週3回のみ開いていたとのことで、今年度開始地点での患者さんは少なかったですが、徐々に増えてきており、現在1日あたり30-40人程度といったところでしょうか。基本的には外来診療を行いつつ、1コマだけ訪問診療が入っているという状況です。

1週間と非常に短い期間ですし、コンセプトも「JADECOM内での地域医療を研修してくる」というものでしたので、基本的に見学メインで研修させて頂きましたが、他の先生の外来見学というのは学生実習以来であり、非常に新鮮でした。東京北では予約外来も担当しておりますが、初期研修自体には全く経験しなかったということもあり、どのように予約外来を進めていけばよいのかのイメージがはっきり無いままに、ずるずると今に至っていました。
ここで一つのロールモデルを目にしたような気持ちであり、東京北に戻ってからも、隙間を見つけて他の先生方の外来見学を行いたいなと思っています。

待合室


研修を経て、一つでは言い表せないぐらい色々なことを感じました。標榜は内科であっても、小児科や皮膚科等にまで対応する幅広さが求められること、病院は治療がメインになりますが、診療所は予防がメインになるということ、予防接種やがん検診を間隔なども含めてどの程度勧めていくべきかということ、高齢運転の必要性、隣人を診療所へ送っていくなどの地域住民同士の助け合い、15km離れた病院へ受診するのは特別でないということ、今なお職業において中心を占める第一次産業 (だからこそ自宅での介護が可能なケースも多いのでしょうか)、管理者としての診療所の運営や、(JADECOMに所属していれば本部が設定してくれるのであまり考える必要はありませんが)職員への福利厚生…… その他にも、これまでの診療では触れたことの無いような、考えたことの無いような、様々な事象に触れることが出来ました。

1週間と短い期間ではありましたが、小櫃診療所のみなさま、貴重な研修をさせていただきまして、誠にありがとうございました!


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2020年10月20日火曜日

WEBで研修体験企画「研修医日記」(月間地域医学2019年7月号より)










こんにちは.専攻医3年目の羽角勇紀と申します.所属は東京北医療センターで,現在は2019年4月から青森県の東通村診療所で総合診療Ⅰ研修をしています.

もともと山形県の出身で,小さいころは秋田,仙台,福島と住み,山形に戻り大学は福島,初期研修は山形に戻り……とずっと東北をウロウロしており,生粋の東北人です.後期研修を選ぶ時,人生で一度は,と東京に出てきたところですが,結局地域研修は東北地方でしており,逃れられないようです.

さて,原稿作成時まだ5月なので折り返しにも到達していない段階ではありますが,現時点での研修について書きたいと思います.
東通村診療所は青森県下北半島にある19床の有床診療所です.
外来は基本的には内科外来,他に1週間に1度の整形外科外来を設けていますが,実際は境界が明瞭にあるわけではなく,内科外来においても肩痛や腰痛など整形領域の相談もあります.ほかに,少ないながら小児の患者さんもいらっしゃいますが,実際はほとんど高齢者の方が多いです.朝の受付は争奪戦で,7時前から待っていたりして,当直明けに寝ぼけた姿で院内を歩いているとびっくりすることも.いろいろな集落から集まってくるので,診療所への来院方法も,自家用車もあればバスで集落ごとにまとまって来院したり,私にとっては新鮮です.帰りのバスに間に合わない,とせかされることも(笑).
常時10数人の方が入院していて,あくまで診療所なので設備という点では病院には劣りますが,肺炎,心不全,脳梗塞,糖尿病,間質性肺炎,胃潰瘍出血,リウマチ性多発筋痛症……など,コモンディジーズを中心にバラエティに富んでいます.どうしても外来が中心になるので病棟業務に割くことができる時間は少ないですが,「診療所=外来」というイメージがある前提から考えれば,事前に考えていたより意外と経験できると感じています.
医師住宅に住んでます.診療所から走れば1分
説明を追加医師住宅に住んでます.診療所から走れば1分








訪問診療は週で20数件あり,初期研修以来初めての経験です.まず,本当にいろいろな家
があるなぁと,医師としてというより個人的に興味深い印象を受けることも多いです.多世代住宅で豪華な家,老々介護で日々の生活でさえ大変そうだと感じる家,犬や猫がたくさん出迎えてくれる家,床がなぜか粘着質な家…….普段,病院で勤務していると見えない,「退院後の生活」に触れることができます.改めて感じることは,医師だけでは何も上手くいかず,訪問看護,訪問薬剤指導,包括,そして家族の協力なくしてはなさないということです.急性期病院にいると入院日数短縮のために,得てして退院を急がすことになりがち(もちろんこれはこれで重要)ですが,そういった点である程度ゆとりがあるのは診療所の良いところです.
ほかに,隣接している老健の回診や学校健診,予防接種なども行っています.
診療所に来て,特に素晴らしいと感じたのは,週に1回開催されている包括カンファレン
スです.診療所医師,看護師,訪問・老健・地域包括・居宅・リハビリスタッフ,薬局薬剤師が一同に会して,それぞれがそれぞれの持ち場,視点から患者さんの情報共有を行います.「〇〇さんが……」との名前だけで話が通じており,まだ2ヵ月弱しかいない自分では話についていけていません.プライマリケアの5つの理念を大切に実践している診療所での研修はこれからも学ぶ点がたくさんありそうです.
こどもの保育園入園式も参加できました〔近くにありいつでも入園可能(多分)〕.



残り4ヵ月間,充実した研修を送りたいと思います.休みの日の観光も.
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2020年8月14日金曜日

WEBで研修体験企画「研修医日記」(月間地域医学2019年6月号より)

病院見学など直接現場に出向く機会が少なくなってしまった中、少しでも研修の雰囲気を感じて貰えれば、という思いから、WEBで研修体感企画として「研修医日記」の掲載を致します。地域医療振興協会が発行する情報誌、「月刊地域医学」のバックナンバーより、不定期に投稿致します。(※掲載の情報などは当時のものとなっております)

2019年度で東京ベイ・浦安市川医療センターの総合内科プログラム3年目かつ「地域医療のススメ」プログラム2年目になりました.去年の5月から「地域医療のススメ」プログラムも並行して所属しています.新専門医制度が始まって2年たち,「総合診療科」は「内科」とは別個の専門科として位置付けられました.私が初期研修を終えて後期研修先を決める時は「新専門医制度が始まる」と言われ,新制度の研修について説明会がそこここでされながらも結局延期されたのでした.

「よきかかりつけ医」「身近で頼れるお医者さん」を夢みる私は総合診療科を専攻しようと思っていましたが,内科の経験を積んでおきたくて東京ベイの総合内科で後期研修を始めました.3年間の内科プログラムの2年目の4月の面談で,「家庭医療,総合診療の道を進むつもりなら今から総合内科研修しながら『地域医療のススメ』プログラムとかけもちすればよい」とご提案いただき,あれよあれよという間にススメプログラムにも所属することになりました.基本的には総合内科研修を遂行中で,ススメの総合診療専門研修プログラムのうちで病棟診療の6ヵ月を総合研修期間として数えてもらっています.

東京ベイの総合内科プログラムでは3ヵ月ごとに内科と他の科をローテートします.年間6ヵ月間を内科,3ヵ月間を地域研修(市立大村市民病院,県立志摩病院,伊東市民病院,西吾妻福祉病院のいずれか),残りの3ヵ月間は学年によって各科(循環器内科,消化器内科,腎臓内分泌糖尿病内科,集中治療科,救急科,etc. )が組み合わされて研修します.地域研修として派遣された病院では,内科医として病棟,外来,救急診療を担います.私は大村市民病院と伊東市民病院に行きました.大村はうまい魚と嬉野温泉が,伊東は毎日入れる温泉と多種多様な症状の方が来る救急外来が印象的でした.どちらも3ヵ月だけなのに病院の皆さんのおかげで愛着が深まりました.
ススメプログラムに所属してから,ススメの合同ミーティングやテレビ会議にも参加させてもらったり,ポートフォリオを細々と作ったりしています.臨床倫理4分割表であるとか,外来診療とか,内科と総合診療で共通な部分もありますが,BPSモデルとか行動変容とかヘルスプロモーションといった分野は総合診療ならではの考え方でとても勉強になります.













「なんで内科に来ちゃったの?」と反語的に訊かれることが少なからずありますが,私は総合内科で研修して良かったと思っています.東京ベイの内科では内科部長の平岡栄治先生から良き医師の6 competencies(P a t i e n t c a r e / M e d i c a l k n o w l e d g e / P r o f e s i o n a l i s m / I n t e r p e r s o n a l a n d Communication Skills / Practice-Based Learning and Improvement / System based practice)を叩き込まれます.総合診療派の先生の中には「内科は病める人でなく疾患をみる」と思っている先生がいるような気がしますが,医学的な要素だけでは良い診療にならないと教わっています.総合内科も総合診療も,違うのは診療する場の違いであって,患
者さんのために一番良いゴールを目指して治療するのは変わりないと,当然のことながら感じています.
初期研修病院のハートの熱いMSWが「各スタッフが専門性を発揮して連携をとるのがチーム医療であり,さらにお互いを助けあって患者さんを支えられるのが“理想的な”チーム医療だ」と言っていました.医師としての専門性を高めていくために,皆さんから刺激を受けながらimprovementしていきたいと思います.これからもよろしくお願いします.

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2020年7月31日金曜日

本州最果ての地にて

20207月 地域医療のススメ3年目 濱近草平

青森県の北東の端っこ、東通村の診療所での研修が10ヶ月経ちました。これを書いている今日726日の最高気温は19℃、夜は寒いくらいで、冷房なんて全く不要です。四国育ちの僕には初めての、涼しい夏を過ごしています。

 東通村は下北半島の北東に位置し、津軽海峡と太平洋の両方に面しています。村の面積は前任地の奈良市とほぼ同じですが、村内に信号機は2個、コンビニは1軒しかありません。一番近い空港、新幹線の駅までどちらも車をそこそこ飛ばしても2時間弱かかります。
人口は6000人ほど、高齢化率は30%を超えています。村の大半は山林と原野で、信号もないのでドライブはめちゃくちゃ気持ちいいです。第一次産業、特に漁業が盛んで、診療所の患者さんの中にも漁師さんがたくさんいます。
 看護師さん(ご実家が漁師)からの差し入れのホタテ。

日頃の業務は毎日の外来、病棟(19床)、併設の老健の管理、訪問診療となります。冬季には各地区に出向いてインフルエンザの予防接種を行ったり、春と秋には村に各一つの小学校、こども園での内科健診を行ったりもします。
 想像していたよりかなり忙しいな、というのが最初の印象でした。今はコロナの影響で処方日数を少し伸ばしたりしたこともありやや減りましたが、1日の外来患者は70人程度、インフルエンザの時期には100人を超えます。よほどの重症で隣のむつ市の病院に搬送されない限りは、救急車もコンスタントにやってきます。村内に他に医療機関はなく、また地理的に隣町まで通院するのが困難な高齢者が多いため、文字通り、村の人々にとって頼みの綱です。病棟の業務は急性期と慢性期の両方の役割を担っており、肺炎や尿路感染症、心不全の悪化などの治療、大腿骨頸部骨折などで他院で手術を受けた方のリハビリ、そして自宅での生活が困難になった高齢者の環境調整がそれぞれ3分の1ずつといった所です。
 救急や急性期治療という点ではこの1年で自分の能力はさほど上がってはいないと思います(勉強不足のせいですが、、、)反面、これまで全くやっていなかった慢性期外来を毎日行うことで、高血圧や糖尿病、健診後の治療方針決定などをかなりのボリュームで経験することができました。また、これまではソーシャルワーカーに任せてしまっていた退院調整に深く関わり、介護保険の仕組みや老健、特養、有料老人ホームといった施設の特徴にも詳しくなることができました。
 何より財産になったのは、一人の患者さんにこれまでになかったくらい何度も何度も会えることです。訪問診療で山を走り、川を渡り、海を眺めながら美しい森を抜け、患者さんに会いに行く時、ああ、地域で働くっていうのはこういうことなんだな、と実感します。各ご家庭のワンちゃん、ネコちゃんの名前もすっかり憶えました。遠い道のりを訪問する時、この村で生きていくということは、われわれの診療所を頼りとすることなんだな、と思わずにはいられません。限られた医療資源に不満をいうのは簡単なのですが、ここで生きていく、ここで死ぬ、と決めた方々に自分ができることは、医療資源を改善することも必要ですが、それ以上に、限られた薬を上手く使い、限られた技術を磨き、村の人々が望む人生をサポートすること、それが10ヶ月をこの美しい村で過ごした僕の気持ちです。もちろんその中には高次医療機関に紹介することも含まれるので、適切な医療を適切なタイミングで提供する勘を鈍らせないようにしなければなりません。送るべきなのか、送らないべきなのか、日々悩みますが、必ずうちの診療所に帰ってこられるように環境を整えるようにしています。送りっぱなしにしないのが東通村診療所の素敵な所です。
 最後に、当所所長川原田先生に教えてもらった言葉をご紹介します。
 「地域医療に必要なのは、まず態度、次に技術、次に知識」
怠惰な僕としては、愛想よく振る舞うことに集中して勉強不足にならないように、この言葉を都合よく解釈しないように心がけています(笑)あと2ヶ月でここを離れるのが本当に寂しいですが、11日をしっかり味わいながら、残りの日々、村のみなさんのために尽くそうと思います。

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2020年7月10日金曜日

WEBで研修体感企画「研修医日記」(月間地域医学2019年4月号より)

病院見学など直接現場に出向く機会が少なくなってしまった中、少しでも研修の雰囲気を感じて貰えれば、という思いから、WEBで研修体感企画として「研修医日記」の掲載を致します。地域医療振興協会が発行する情報誌、「月刊地域医学」のバックナンバーより、不定期に投稿致します。(※掲載の情報などは当時のものとなっております)



2018年4月より「地域医療のススメ」の総合診療プログラムで研修しています,専攻医1年目の氷渡柊と申します.2018年4月 から12月まで東京北医療センター(以下,東京北)の総合診療科で, 2019年1月から3月までは東京北の小児科で研修させていただ きました.同年4月からは再び東京北の総合診療科で研修させていただく予定です. まず当院での総合診療科での研修ですが,週1回の初診・予約外来と病棟管理が業務の中心であり,それらに加えて各種カンファレンスや上級医によるレクチャー,医学論文の抄読会を毎週のルーチンとしてこなしています.当科では専攻医・あるいは初期研修医といった学年の若い医師が診療や教育の中心を担っていますが,指導医や学年が上の専攻医のバックアップ体制がしっかりしており不要なストレスを感じず自信をもって業務を行っています. また現在は少し余裕も生まれ,微力ではありますが初期研修医など後輩医師の指導に携わる機会も増えてきました.

 さてここからは現在私が関わるプロジェクトについて一部ご紹介します.専攻医として1年が経過しようとする中,東京北の総合診療科では人事の影響から来年度の大幅な診療体制の変化を余儀なくされました.この状況をわれわれは総合診療科の転換期と位置づけ,今後のさらなる診療の質の向上とスタッフ・レジデントのやりがい・満足度向上のため,組織改革を推し進めるべく日々科内でカンファレンスを重ねています.そして改革の指揮をとる指導医のもとで,私を含めた専攻医が中心となりその議論に参加しています.



 プロジェクトの方針として,まず総合診療科として自分たちが目指す総合的な方向性を共有ビジョンとして打ち出し,それを元に各論的な戦略を組み立てていきます.この方法論は組織の変化に対しての成長戦略における重要な要素で,組織が常にしなやかに前進するために世界的にも広く行われているようです. 共有ビジョンは,当科が大切にする「和気あいあい」「biomedical」「バランス」という3要素を含むものにしたいと考えました. 「和気あいあい」には働きやすさ・助け合う という意味が,「biomedical」には広義の知識と技術という意味があります.その上で東京北総合診療科の強みである患者の個別性・ 医療関係者間・患者が置かれた地域など全体でのバランス感覚を持つことを「バランス」と表 現しました.「biomedical」という肉食の部分を芯に持ちつつも,全体の「バランス」を取ることができるという草食の部分で覆い,かつ暖かくツンツンしていない「和気あいあい」感がロールキャベツという単語に比喩されるのでは,という意見がありました.これに科内全員で前向きにコンセンサスを得られ,われわれは「ロールキャベツ系総診である」という共有ビジョンが完成しました.

現在はこの共有ビジョンを元に,当科の成長戦略を議論する「学習する組織」と,対外的な マーケティング方法を模索する「ブランディング」の2グループに分かれ,各々が戦略を議論しています.東京北総合診療科の大きな転換期に組織改革の重要な役割を担うことで,自分も科の一員として活動していると改めて実感し,またそれが日々の業務に対するモチベーションにもなっています.来年度も東京北での勤務が決まり,これからも総合診療科という組織とともに自分自身もさらに高めていければよいと考えています.まだまだ至らない部分もありますが,今後ともよろしくお願い申し上げます

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2020年7月7日火曜日

WEBで研修体感企画「研修医日記」(月間地域医学2018年12月号より)

病院見学など直接現場を感じる機会が少なくなってしまった中、少しでも研修の雰囲気を感じて貰えれば、という思いから、WEBで研修体感企画として「研修医日記」の掲載を致します。地域医療振興協会が発行する情報誌、「月刊地域医学」のバックナンバーより、基本的に毎週火曜日、金曜日に掲載する予定です。
(※掲載の情報などは当時のものとなっております)


ススメ専攻医3年目になりました,吉岡です.前回から約2年の歳月が流れました.これまでをざっと振り返っておくと,2016年12月から小児科研修のため茨城県石岡市で3ヵ月過ごした後,古巣である東京北医療センター総合診療科に凱旋(?)し,その後台東病院で一般病棟・回復期病棟・療養病棟・老人保健施設と総合的に高齢者医療を学びました.
そして,これまでに経験したことのない診療科を回りたいと思い,2017年10月から意を決して東京ベイ・浦安市川医療センターへ再び乗り込み,腎臓内科→総合内科 →ICUと研修させていただきました.2018年7月からは奈良市立都祁診療所に移り,現在に至ります.
 旧都祁村にあたるこのまちは奈良県の北に位置し,『奈良のシベリア』とも言われています.実際に2月ころには雪が降り数日は積もるそうです.人口約5,500人のうち実際にかかりつけであるのは10%程度で,ふもとの天理市や隣の宇陀市といった周辺の病院に通院している患者さんも少なくありません.
一方で,例えばがんのターミナルで通院ができなくなった患者さんが在宅医療へ移行する際の受け皿という大切な役割があり,かなり頼りにされている印象です. 私が診療所で研修を行うのは後期研修医になってからは初めてのことです.日々の業務は外来と訪問診療,予防接種や乳児健診, 有料老人ホームや特別養護老人ホームへの定期診察と多岐にわたり,週に3回は17 ~ 19時までの夜間診察もあるため,意外に忙しいことに驚きました.最近は訪問件数も増えてきており,スケジュールのやりくりに苦慮しているところでもありますが,それだけニーズがあるということなのでやりがいがあります. また,直前まで東京ベイのICUにいたこともあり,180°以上真逆 のセッティングにはじめは戸惑うこともしばしばありましたし, 正直に言えば今でも慣れません.診療所にはCTやMRIはありませんし,検査技師さんもいません.血液ガス分析もできません.緊急対応が必要そうな患者さんが不意打ちで訪れたときは,最低限の採血とレントゲンとエコーを駆使して頑張るしかありません.そうしている時間さえ惜しいときもあります.家で診られるか?今からふもとの病院に自家用車で行ってもらうか?救急搬送するか? ・・・・・・病院にいたときよりもずっと,緊急性や重症度を客観的に評価することの大切さ, 難しさを今更ながら痛感しています.

セッティングの違いといえば,在宅医療においては『引き算の医療』なのかなと思うことがあります.医学的には妥当なこと,必 要な検査や治療が受けられるべき状況にあっても,本人や家族がそれらを望まない場合もあります.実際に,20年以上も頸髄症の術後後遺症に悩まされ徐々に屋内歩行もままならなくなってしまった70代男性が,1~2ヵ月の経過で食思不振と体重減少を来したため,家族から往診依頼がありました.私たちは消化管悪性腫瘍を疑い検査受診は医学的に妥当だと考えました.しかし本人はこれまでの医療不信から絶対に受診はしないという強い思いがあり, 家族と何度も話し合った末,自宅で看取るという方針に至りました.これが本当に正しいのかは分かりません.しかし,ここで私たちの意思決定を助けてくれたのは,東京ベイで日々学んでいたAdvance Care Planningをはじめとする臨床倫理の考え方でした.家族にとってはつらい選択であったかもしれません.私もとても苦しかったです.ただ,最期は自宅で穏やかに亡くなり,家族の方が「後悔はない」とお話ししてくださったのが救いでした.
これまで病院で学んできたことをどう診療所の医療に落とし込んでいくかが,今後の私の課題です. 初めての関西・奈良ライフをもっと謳歌しながら,残りの診療所研修を楽しんでいきたいと思います

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2020年6月30日火曜日

WEBで研修体感企画「研修医日記」(月間地域医学2019年1月号より)




今年度より「地域医療のススメ」所属となりました,専攻医1年 目の畠中と申します. 今年度は4月から10月まで東京北医療センター(以下,東京北) の総合診療科で研修をし,10月から3ヵ月は小児科研修をして,1 月からはまた総合診療科に戻る予定です. 最初は初期研修との違いや新しい環境・人間関係に慣れることに必死だったのですが,現在は小児科研修中で再び初期研修医に戻ったような気分で日々の業務に邁進しおります.
 総合診療科での研修は,週1,2回の外来と病棟業務,東京北の売りである「EBM」に沿った抄読会,日々の各種カンファレンスがルーチンワークで,時々セミナーなどのイベントが入ってくるという日々です. これまでやってきていない外来や,経験のない症例がどんどん押し寄せ,当初は入院患者の振り分けでも怖気づいていました.しかし,基本的にチームごとに動くシステムがあり,全て先輩やス タッフがバックアップしてくれるようになっているため,初期研修医の先生方も主治医として活躍しています. 一方で,私が研修している東京北は比較的都心に近く,正直なところ,いわゆる「地域医療」という感覚はありません.へき地を含めた地方で,医師数も少なく,なんでも診なくてはいけない……そういったところではないからです.以前,面接試験で「あなたにとって地域医療とはなんですか?」と聞かれたことがありますが,そのときあまり答えられなかったことを覚えています.後に,その地域の医療においてどのステージをイメージしているかを聞きたかったということを教えていただきました.


当院のような都心に近い急性期の病院では,いわゆる地域感はないと思いますが,基幹病院として慢性期へとつなぐ急性期医療や,情報を発信していく側,また総合診療を広めていく役割があり,それを学ぶ場なのかなと考えています. そうした取り組みとして,夏には医学部の学生向けにEBM体験セミナーを行 い,私もスタッフとして参加しました. 病院総合医側,家庭医側に分かれて症例を検討し,治療について合議して結論を出すというもので,主旨としては立場の違いや持っている情報の違いで大きく視点や意見が変わってしまうこと,その中で結論を導き出さなくてはならない難しさを体験してもらうというものでした.運営は学生が行っていて,学生時代に そういった活動はしてこなかった私はその手際や積極性に感心し,また参加者の学生とは思 えない洞察力にも非常に驚かされました.議論も白熱して大きな盛り上がりを見せることができ,その後のスタッフの振り返りも自然と熱が入りました.確実に総合診療に関心がある世代が育ってきていることを感じ,われわれ専攻医にとっても研修とは日々の診療だけをしていれば良いものでないことを実感できる日となったと感じました.われわれ総合診療医は他の科と異なる能力・適正・業務を求められる領域と自覚し,今後も精進してまいりたいと気を引き締めております.
今後ですが,来年はプログラム外で研修する予定です.関連病院ではあるのですが,立ち上げとなる病院で勉強してきます. このことが決まるまでにはいろいろな 先生方が気にかけてくださり,相談に乗ってくださいました.この場を借りてお礼申し上げます.「ススメ」は私のような末席のものにも手厚いサポートがある研修プログラムです.私も後輩たちにそうあれるよう頑張りますので,今後とも皆さまよろしくお願い致します


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2020年6月26日金曜日

WEBで研修体感企画「研修医日記」(月間地域医学2018年11月号より)


















東京北医療センター「地域医療のススメ」後期研修医1年目の近藤真未です. 私は4月から6月まで小児科研修を終えた後,現在は同病院の 総合診療科で研修4ヵ月目を迎えています.初期研修から勤めている病院であり,システムやスタッフも慣れた環境での後期研修 は比較的スムーズにスタートできたと感じております. 当院は東京都北区赤羽,埼玉県との県境に位置します.赤羽には駅前に一番街という昔ながらの飲み屋が立ち並んでいる通りがあり,最近はメディアにも取り上げられることも多く,住みたい街ランキングの上位にも挙がるようになりました.業務が終わってから飲みに行く場所には困らず,スタッフや医師同士の良好な関係を築く手助けになっていると感じています.私は赤羽に住んで まだ3年程度ですが,23区でありながら故郷や実家に帰って来た時のような懐かしい雰囲気を持つ不思議な街であり,東京駅や池袋・新宿にもアクセスの良い環境で,住みたい街ランキングで上位に挙がるのも納得です.一方で,当院を受診する患者さんの特徴としてはアルコール依存症の患者さんやご高齢・独居・身寄りのない患者さんが多く,退院調節や外来での生活指導に日々奮闘しています. 当院は複数の診療科が存在していますが,総合診療科があることで複数の病気を抱えている高齢患者さんなどの管理を総合的に行うことができ,かつ他科との垣根も低いため状況に応じてすぐに専門的加療について相談ができるため,老年人口比率24.6%と高齢化が進んでいる北区には適した体制であると考えます.総合診療科研修の特徴としては週1回の抄読会と週1回のシニアコアレクチャーがあります.抄読会では日々の診療で生じた疑問から論文を選び,批判的吟味を行います.論文の結果を鵜呑みにするのではなく,論文の条件などを細かく見ることで結果をどのようにとらえるべきかを知り,目の前の者さんが何を求めているのかを考えて医療を行う練習をしています.また,シニアコアレクチャーでは外来で診療する慢性期の患者さんの疾患のマネジメントをどのように行うべきか等,日ごろの疑問を解決する場となっており,非常に充実した教育であると感じています.
同期と赤羽の居酒屋にて
私自身としては,総合診療科で3月まで診療を行った後は,地域の診療所で1年間を通して地域医療・家庭医療を学ぶ予定です.地域でも当院で学んだエビデンスに基づいた医療を行えるように,あと数ヵ月間これらの勉強会を十分に活用して頑張ります.その後の大きな目標としては,診療所勤務の家庭医を目指しています.そして,病気の治療だけでなく,ヘルスプロモーションを進めていきたいとも考えています.現在の総合診療科コースは新プログラムが始まったばかりで,未定の部分も多く前例のない不安定なコースであると感じています.しかし,当院では最終的な目 標は違えど同じような志を持った 同期や先輩方に囲まれて研修を進めることができる,恵まれた環境であると感じています.まだまだ,目標までは程遠く,先は長いですが目の前の課題一つ一つを解決しながら少しずつ目標に届くように日々精進してまいりたいと思います.これから研修先でお世話になることもあるかと思いますが,ご指導ご鞭撻の程よろしくお願いいたします.
東京北医療センター総合診療科


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2020年6月23日火曜日

WEBで研修体感企画「研修医日記」(月間地域医学2018年9月号より)






今年度より「地域医療のススメ」所属となりました,小山元気と申します.4月からは,東京ベイ・浦安市川医療センターの救急部にて3ヵ月間お世話になりました.その後7月からは練馬光が丘病院の総合診療科でお世話になっています. 短期間で研修場所を転々とするのがこのプログラムの特色でもありますが,なかなか腰を落ち着かせられる場所がなく移動を強いられるのも大変なように思えます.またここ最近は,新しい職場に慣れること,その中でうまく立ち回れるように専ら自分の中でリズムを作ることに精一杯な毎日です. そんな日々の中でよくこのように思います:どこに行っても,職場ごとの流儀,お作法,そういった類のものに,恐らく今後も多々出会うのだと.その時にまず自分ができることとして,なるべく早くその場に慣れて,その場の一員として貢献する.これくらいだろうと思っています. もちろん流儀や作法にとどまらず,これは広く言えばその地域で行われている医療に関しても,同じように慣れていき,その一員として貢献していくこととしても言い換えられるでしょう.そしてそのこと自体が,私のような地域に根差して活躍をしたいと考える者にとっては重要なのだと考えています. ただ,今後の高齢化・少子化の未来を描く中で,言い換えれば既存の地域医療をつくる歯車の中で,間を縫ってスムーズになるように作用する潤滑油のような役割を果たしながらも,今後もその地域が存続できるような方法を模索していきたいとも思うのです. このまま人口が減少していった先の日本で,現状のような生活を維持できるほどに存続できるかどうか,もしそうでないならどのように続いていくことができるのか.このように考えると,日本全国各地域での人の活動の支えとして,地域ごとに展開される地域医療から変わっていくことが大事なのではないかと考えています

医師、NDC、歯科衛生士と多職種連携(?)飲み会

一方,では地域医療とは何かと問われると, その対象自体が一定ではなくその時その場で変わりうる以上,的確な答えを述べるのは難しいように思います.しかし,現状でそれら地域医療を包含している“日本の医療”については,今後大まかにどういったものにしていくのかを決められると思います.このとき,大きな視点での日本の医療と,一方の構成要素である小さな視点での日本の地域の医療とが,それぞれバランスよく歩み寄った形になるの が望ましいのだと思います. 私の好きな言葉に中庸というものがあります.何事も極端でなく行き過ぎない程度で,丁度いいところに行きついた,そんな状態を指す言葉です.きっと物事のすべては同じように極端な状態を考えられると思いますが,そこで極端にならず,ただそれらの中間でもなく,その場にふさわしい状態があるものなのだと思い ます.それは関係している物事のうち, 考えられるものをなるべく多く考えたときにたどり着くことが出来るのだと思っています. 今後私はさまざまな地域での医療を経験していくことになるでしょう.その中で今後の日本の向かう先を大きく考えながら,その地域で自分がどのように貢献できるのか,それを念頭に置きながら頑張っていきたいと思います.その過程の中で,これから訪れる地域の方々と出会えることが,とても楽しみです.
練馬光が丘病院内科Bチーム!

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2020年6月16日火曜日

WEBで研修体感企画「研修医日記」(月刊地域医学2018年6月号より)

病院見学など直接現場を感じる機会が少なくなってしまった中、少しでも研修の雰囲気を感じて貰えれば、という思いから、WEBで研修体感企画として「研修医日記」の掲載を致します。地域医療振興協会が発行する情報誌、「月刊地域医学」のバックナンバーより、基本的に毎週火曜日、金曜日に掲載する予定です。
(※掲載の情報などは当時のものとなっております)

地域医療のススメ専攻医の山田宏貴と申します.医師7年目となり,地域医療のススメ専攻医の中でも一番上の学年となりました.前年度は台東区立台東病院に1年在籍し,チーフレジデントとして,専攻医や初期研修医の指導に当たらせてもらいました.今年度4月からは湯沢町保健医療センターでの研修が開始し,病棟管理,内科外来,小児科外来,外傷治療,訪問診療と家庭医らしく仕事をさせていただいております.今まで練馬光が丘病院総合診療科,救急科,東京ベイ・浦安市川医療センター集中治療科,腎臓内科,公立久米島病院内科,市立恵那病院小児科,シティ・タワー診療所とさまざまな施設で研修を積んできましたが,それぞれの研修が今の診療に生かされていると実感しております.
初期研修,後期研修,NP,NDC混合チーム


さて今回は,今までで一番長く研修させてもらった台東区立台東病院について紹介します.台東病院はその名の通り東京都台東区に位置し,東京23区初の区立病院になります(とWikipediaに書いてありました).台東病院の良さの一つに,都会に位置しながら急性期から慢性期,看取りに至るまで入院診療を継続できる点があり,3階は急性期病棟,4階は回復期リハビリテーション病棟, 5階は医療療養病棟,6~8階は介護老人保健施設となっております.研修医は急性期病院で働くことが多く,回復期リハ ビリテーション病院や療養型病院へ転院していった後の患者の経過を経験できないことが多いと思いますが,台東病院では最初から最後まで入院主治医であり続けることができます.

台東病院雪景色


JADECOMの施設内で回復期リハビリテーション病棟を持っている病院は多くありませんので,回復期病棟の患者を担当できることも大きな魅力です.
研修のスケジュールとしては,救急当番が3単位前後,外来が2単位前後がdutyです.そのほかに内視鏡,老健管理, 整形外科外来,皮膚科外来などの研修を希望があれば受けることが可能で,褥瘡チーム,NST,ICTなどに加わり,各専門領域を学ぶこともできます.

チーム飲み会

 私は褥瘡チームの一員として,褥瘡回診を担当してい ましたが,1年間いることでさまざまなケースに携わることができ,大変勉強になりました. 私の不勉強のせいで褥瘡の治癒が遅れることは避けなければと必死の思いでやっていましたが,時に皮膚科の先生に助けてもらいながらも,1年継続できたことは,大きな強みになりました.
Off the jobも充実しており,他職種と の交流も多いです.病棟での飲み会,歓送迎会はもちろんのこと,墨田川の花火は病院の屋上から綺麗に見ることができますし,私の場合はヨガクラブに所属し,リハビリセラピスト,看護師と一緒に汗を流しておりました.
 この4月からは新たに専攻医が2人,他病院から研修にいらっしゃった先生が1人,新任の常勤の先生が2人,とフレッシュな風が続々と入ってきており,ますます活気づいている ようです.専攻医の先生方や内科病棟やリハビリ病棟の研修をご希望の先生方は,機会があればぜひ一度台東病院での研修をご検討ください.私も近日中に戻る予定ですので一緒に楽しく仕事しましょう.よろしくお願いします.

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2020年6月12日金曜日

WEBで研修体感企画「研修医日記」(月刊地域医学2018年7月号より)

病院見学など直接現場を感じる機会が少なくなってしまった中、少しでも研修の雰囲気を感じて貰えれば、という思いから、WEBで研修体感企画として「研修医日記」の掲載を致します。地域医療振興協会が発行する情報誌、「月刊地域医学」のバックナンバーより、基本的に毎週火曜日、金曜日に掲載する予定です。
(※掲載の情報などは当時のものとなっております)


皆さんこんにちは.はじめまして,「地域医療のススメ」専攻医1 年目の田中 航と申します.市立奈良病院で初期研修を終え,この春から「地域医療のススメ」に参加させていただいております. 
後期研修が始まって最初の研修先は,いきなり診療所でした.現在私は「奈良市立都祁診療所」というところで研修しています.都祁診療所のある場所は奈良県の東部山間地域なのですが,診療所のすぐそばを名阪国道が通っていて奈良市内には車で40分程度と,アクセスは意外といいです.医師は私と所長である西村正大先生の2人,看護師さんは3人体制で日々診療を行っています.主な業務内容は朝と夜の外来診療・往診・学校健診・禁煙外来・予防接種などですが,初期研修医のころに経験したことのないものも多く,診療所に来たばかりの4月ごろは慣れるのに精一杯,というかやってる内容を理解するのが限界という感じでした.しかし,辛いということは全くと言っていいほどありませんでした.その理由は「やりたかったことだから」,これが大きいと思います.
都祁診療所外観.保健センターが併設されています.隣には薬局と歯科もあり地域連携に優れています.
 私は元々「地域医療に従事する医師になりたい」と中学生のころから思っていました.思ってからはまあ色んなことがありましたが,初期研修医のころに「地域医療のススメ」という家庭医・総合診療医の育成プログラムがあるのを知り,患者さんに正しい医療を提供できる一人前の家庭医になるにあたって必要な医学的知識・技術をしっかり身に付けたいと思い,事実そういった先輩医師が数多くいるこのプログラムに専攻を決めました.

外来1診.全部で3診あります.エコー,パソコンは最新型です.外からは良い風が入ります.

最初は総合病院からのスタートだと思っていたので,正直不安はありましたが,5月末になった現在,やっと慣れてきたかなと思い始めています.慣れてくると同時に,楽しさも覚えてきました.よく考えてみるとまさに 憧れていた分野で研修ができているわけで, 楽しくないわけがありません.禁煙外来で初回は「タバコがないと死ぬ」と言っていた人が2ヵ月後には「タバコを吸わないおかげでご飯が美味しい,死なんでよかった」と言ってくれたり,初めての一人往診で緊張しながら話す私に, 笑顔でお茶を出してもてなしてくださったり,外来で5分前に覚えたばかりの知識を活かす時があり,それがなんとうまく いってしまったりなど,診療所に来てまだ2ヵ月ですが印象に 残ったこと,嬉しかったことは多いです.

都祁診療所入口で撮ってもらいました

 もちろん,日々の業務の中でうまくいかなかったことや悲しかった出来事もあります.しかし,それも地域ならではの貴重な体験であることが多く勉強となります.さらに,毎日のようにその日の振り返りがあり,「地域医療のススメ」の先輩医師でもある西村先生や,専攻医3年目の佐々木貫太郎先生からフィードバックをいただき充実した日々を過ごしています.診療所の看護師さんや老健のメディカルスタッフの方々も非常に優しく,昼食のお弁当もおいしく,とても感謝していますが,ちょっと恵まれすぎなんじゃないかと少し怖いです. 後期研修が始まり早くも2ヵ月が経ちますが自分の未熟な面を実感する毎日です.これからも精進して立派な家庭医を目指していきたいです.ご指導・ご鞭撻のほどをよろしくお願いいたします.

近くには針テラスという大型の道の駅があります.温泉もついています.


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2020年6月9日火曜日

WEBで研修体感企画「研修医日記」(月刊地域医学2018年4月号より)

病院見学など直接現場を感じる機会が少なくなってしまった中、少しでも研修の雰囲気を感じて貰えれば、という思いから、WEBで研修体感企画として「研修医日記」の掲載を致します。地域医療振興協会が発行する情報誌、「月刊地域医学」のバックナンバーより、基本的に毎週火曜日、金曜日に掲載する予定です。
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東京北医療センター総合診療科,「地域医療のススメ」専攻医1年目の横田遊と申します.  
2017年度は新しい出会いばかりのめまぐるしい1年でした.初期研修が終わったと思ったら4~6月は早速の地域研修で日光市民病院へ. 不安だらけでしたが,初期からの同期である川堀奈央先生と2人で行ったため心強かったです.みなさん優しい方ばかりでとても楽しい3ヵ月でした.仕事だけでなく,飲み会やゴルフ,温泉など盛りだくさんな日々でした.一方で一生忘れられないような失敗もありました.施設入所中の男性が活気低下,傾眠傾向を主訴に外来受診されました.診察・採血の結果,異常なしと判断し帰宅を指示しましたが,実は貧血が進行しており,消化管出血で ショック状態になり救急搬送されました.私のミスに気づき,即座 に教えてくださった小池宏明先生には本当に感謝しております.そのほかにもたくさんのエピソードがありましたが,ここでは割愛させていただきます.とにかく,医者としても人としても尊敬する先生方に出会え,とても恵まれた研修でした.
歴代日光研修組が大集合

7~9月は練馬光が丘病院での救急/ICU研修.日光でのゆったりとした日々から打って変わり,救急車の音ばかり聞いていまし た.自分の知識不足が嫌と言うほど分かり泣きそうになることや,恥ずかしいこと多々ありましたが,救急専門医の指導のもと基礎から教え ていただき大変勉強になりました.さまざまな病院から指導医として先生がいらしているので,いろいろな考え方を学ぶ ことができたことも良かったと思い ま す.救急が恐いの は今も変わりませんが,練馬での日々で少しは苦手意識が解消されたと思います.また,救急隊との関係が良好な点も,とても印象に残りました.練馬光が丘では研修医の救急車実習が必須になっており,私も1泊2日の研修をさせていただきました.学生以来の経験でしたが,またあの頃とは 違う目線で研修することができました.

練馬光が丘病院の救急/ICUの先生方と

10月からは楽しみでもあり,嫌でもあった東京北医療センターでの総合診療科研修.慣れ親しんだ環境ですが,初期研修とシニアでは仕事量や責任が違い,やはり大変です.週に1回の初診外来と予約外来があり,主治医として自分が担当している患者は8名前後.一見楽なようにも聞こえますが,カンファレンスが ほぼ毎日あったり書類やサマリーの仕事があったりと,あっという間に1週間が終わります.でも分からないことを聞きやすい先輩方,愚痴を聞いてくれる同期,優秀な後輩,私のミスを カバーしてくださるコメディカルの方々,本当に良い人ばかりの環境で,温室育ちだなと思う日々です.雰囲気の良いところが東京北の自慢なので,ぜひ皆さん来ていただければと思 います. 専攻医になったものの,大多数の方々と違い私は自分の将来に明確なビジョンがなく不安に思うことも多いですが,どんな道を選んでもこの研修が決して無駄になることはないと思っています.4月から専攻医2年目と なりますが,楽しく研修を続けられたら と思っています.

先生方と初のフルマラソン

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2020年5月22日金曜日

恵那での産婦人科研修報告

地域医療のススメ専攻医の地域自慢 〜恵那(えな)での産婦人科研修〜
 20205月 ススメ後期研修3年目 北口馨菜英

コロナ禍冷めやらぬ日々ですね。影響は人それぞれだと思いますが、苦しい思いをしている方々に心からお見舞い申し上げます。
私は4月から総合診療科後期研修の一環で、岐阜県の市立恵那病院で産婦人科研修しています。自然豊かなところで、木々や花々、鳥たちは生き生きしていて癒されます。虫も多いんですが・・・癒しの写真とともに、ススメの総合診療研修の一部としてご紹介します。

・恵那市、恵那病院について
恵那市は岐阜の東濃地域にあり、名古屋から電車で1時間北上したところにあります。人口51,141人(H27.4.1)で岐阜県全体のおおよそ2.5%を占め、老年人口割合が32.4%(全国の老年人口割合26.7%)と高齢化した地域です。(恵那病院HPから引用)
病院は恵那駅から車で7分、坂を少し登ったところにあります。山を拓いて建てたそうな。院内には趣ある木の引き戸や天井の梁に利用されているそうな。
(恵那病院エントランス 明るくて温かみがあります)
199床の入院病床があり、維持透析室や化学療法室があります。内科、外科、整形外科、リハビリテーション科、産婦人科、小児科などがあり、医師数は多くない中で地域のニーズに応えています。
恵那病院公式HP  https://www.enahosp.jp/

職員宿舎は広い病院敷地内にあります。うぐいすがよく鳴いています。てんとう虫がどこからか部屋へ入ってきて、転がっています・・・





(宿舎から撮影した動画;ウグイス鳴いてます♪)

・恵那病院産婦人科での研修について
私は内科として後期研修してきたので、総合診療・家庭医療の本格的な研修はこれからといったところです。新専門医制度のはざまの学年で複雑怪奇ではありますが、私は地域医療振興協会の総合診療医養成プログラムである「地域医療のススメ」に所属して、プライマリ・ケア連合学会で言う改訂家庭医療後期研修プログラム;通称「Ver.2.0」の後期研修をしています。
産婦人科研修は、プライマリケアを担う女医として更年期症候群や月経困難症、妊娠・出産に関わるケアなんかの女性診療のプライマリケアができるようになりたいと思って研修を組んでもらいました。恵那病院産婦人科ではウィメンズヘルスを推進していて、先輩方からも好評なのです。お産ができる地域の中小規模の総合病院なので、産婦人科疾患のプライマリ領域を学ぶにはもってこいです。
女性診療に興味があればPCOG(日本プライマリ・ケア学会 女性医療・保健委員会)のホームページ(http://www.pcog.jp/)のデータベースがすごく勉強になりますよ!

それでは、恵那の写真に癒されてください!
散歩中の風景
ヘリポートから病院の遠景
近所から撮影した木曽川

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