2017年4月18日火曜日

行動変容 transtheoretical model

台東病院研修中の専攻医3年目小林です。


4月から台東病院にお世話になっているんですが、研修医が増えたのもあり月~木で昼レクチャーが始まりました。
月曜日が論文レビュー、火曜日が教科書輪読、水曜日が症例検討、木曜日が各々担当レクチャーという感じです。
第1回の担当レクチャーを担当し、行動変容をテーマにしたのでファイルを共有しようと思ったのですが、パワーポイントはこちらにアップできないようです。
要点を抜き出して以下に載せます。


【Transtheoretical Modelって何?】
ProchaskaとDiClementeによって提唱
300以上の様々な心理療法や行動変化理論を統合して作成 trans=汎、theoretical=理論的
4つの要素から成る (変容ステージ、変容のプロセス、意思のバランス、自己効力感)

【変容ステージ】
行動変容の段階を行動に対する準備性(レディネス)の観点から6つに分類し説明したもの
1.前熟考ステージ:6か月以内に行動を変えようとする意志なし
2.熟考ステージ:6か月以内に行動を変えようとする意志あり
3.準備ステージ:1か月以内に行動を変えようとする意志あり
4.実行ステージ:行動変容を実行してから6か月以内
5.維持ステージ:行動変容を実行してから6か月~5年くらいまで
6.ターミナルステージ:どんなストレス下でも以前の不健康行動はしない。行動変容を変化させて最低5年ほど継続。到達するのは20%未満。
*再発=あるステージから1つ以上前のステージに逆行すること

【変容のプロセス】
ヒトが行動変容を起こす際の流れ、手順
一般的に前期ステージ間(前熟考-熟考-準備)の移行に関しては経験的プロセス
後期ステージ間(準備-実行-維持)の移行については行動的プロセスを用いることがより効果的

経験的プロセス:自身の経験により内面的な認識が変化
①意識の高揚:行動に関して情報収集 例 喫煙のMIリスクを知る
②感情的経験:行動による結果を知り陰性感情を体験。例→愛煙家の知人がMIで死亡
③自己再評価:行動変容による自分の利得。セルフイメージの再構築。 例 臭いと言われなくなる
④環境再評価:行動変容による周囲の利得。例→子どもの喘息が落ち着く
⑤社会的解放:社会的環境の変化。例→喫煙スペースが減る、ポイ捨てに罰金など

行動的プロセス:周りの環境から得る行動変化
⑥反対条件付け:代替行動。例→タバコ代わりの飴やコーヒー
⑦援助関係:他者のサポート。医療者、家族など
⑧強化マネジメント:報酬>罰則。例→禁煙分だけ貯金
⑨自己解放:周囲に意思表明。例→新年の誓い、宣誓書
⑩刺激コントロール:環境を整える。例→灰皿を捨てる、禁煙ポスター、運動選手のポスター

声かけ例
①たばこがどれくらい体に悪いか知ってますか
②周りの方でタバコ吸ってて重たい病気になった人いますか
③煙草をやめるとごはんがおいしく感じられます
④子どもの喘息が落ち着く
⑤最近喫煙スペースが減ってきてますよね
⑥たばこ代わりにストレス解消になるものはありますか
⑦禁煙したくなったらいつでもサポートします
⑧たばこを1日ガマンしたら500円貯金する
⑨周りの方に禁煙することを宣言してみたらいかがですか
⑩たばこや灰皿を家から捨てましょう


【意思のバランス】≒重要度?
問題行動のプロズ(長所)とコンズ(短所)

重要度が50の場合:
0じゃないのはなぜ?→長所が聞ける 例:たばこをやめると飯が上手い
100じゃないのは?→短所が聞ける 例:周りが吸ってると居心地悪い


【自己効力感:セルフエフィカシー】≒自信度?
特定の状況下での行動遂行に対する自信感(見込み感)
自信 vs 誘惑

自信が0じゃないのはなぜ?→自信 例 以前にも禁煙歴ある
100じゃないのは?→誘惑 例 友人に誘われると・・・


参考文献:
1)Prochaska JO, DiClemente CC .Transtheoretical therapy: Toward a more integrative model of change. Psychotherapy: Theory, Research & Practice, Vol 19(3), 1982, 276-288.
2)Prochaska JO, VelicerWF. The transtheoretical model of health behavior change. Am J Health Promot. 1997 Sep-Oct;12(1):38-48.
4)Publish Company, Inc, NY, 2002 日本語翻訳 竹中晃二 監訳 高齢者の運動と行動変容 トランスセオレティカル・モデルを用いた介入. Book House HD,Ltd.,Tokyo




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1 コメント:

Unknown さんのコメント...

小林先生

湯沢町保健医療センター井上です。
お昼の勉強会、すごいですね。
実際の診療の中で無意識に使っていたりする理論が、うまくまとまっていますね。
あとは実践です。実際の現場でどれだけ使っていけるかだと思います。
こればかりは知識だけではなんともならないので、場数を踏んで経験を積んでもらうと良いと思います。
頑張ってください!

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