2015年6月26日金曜日

シティ・タワー診療所 振り返り


ススメ卒業生の田中です。
2015年4~6月の3ヶ月間、JR岐阜駅前にあるシティ・タワー診療所で在宅医療を中心に研修させていただきたので、その振り返りをおこないたいと思います。

① 在宅緩和ケア
3ヶ月間で何人の末期癌患者を診て、何人お看取りしたか…もはや覚えていません。私は後期研修で緩和ケア病棟を3ヶ月間ローテートしたのですが、オピオイドの持続皮下注などその時に学んだ症状緩和のスキルが非常に役立ちました。また血液悪性腫瘍の患者の終末期を診る機会に初めて恵まれました。自然経過が固形癌とは異なりやや不安でしたが、紫斑や血液データからある程度の予後を予測し、説明および症状緩和をおこなうことができました。

② 在宅小児ケア
低酸素脳症や先天性疾患による重症心身障害児に在宅医療をおこなう機会に恵まれました。当初は「これが家庭医の仕事なのか!?」とビックリしたのを覚えています。この経験を通じて気づいたのは、時代や地域によって、家庭医の役割は常に変化を続けるだろうということです。専攻医の立場からこの現実を直視すると、将来必要となるスキルを100%予測して研修を計画することは、ほぼ不可能であることを示していると思います。もちろん質の高い研修プログラムに所属すれば成長できることは間違いありませんが、長い医師人生においては生涯学習のほうがより大事であることを痛感しました。

③ 慢性期の在宅医療
ALSや多系統萎縮症などの神経難病患者を診る機会に恵まれました。初期・後期ともに神経内科をローテートしておらず、疾患概念の理解はやや不安でしたが、慢性期の療養としてはAirway=気管カニューレ、Breathing=人工呼吸器の管理が大事であり、ICUのローテート経験が生きました。一般的なことなのかはわかりませんが、過去の医師人生で最も気管カニューレの交換をおこなった3ヶ月間でした。

④ 医療制度、地域連携
私は後期研修中に在宅医療に関係した医療・介護制度のことについて勉強したことはなく、この診療所で働くまで訪問看護に医療保険と介護保険があることも知りませんでした…。私の後期研修は、これでよかったのでしょうか…。障害者総合支援法や療育医療などまでは手が回らなかったので、今後も勉強を続けたいと思います。
そして市街地の在宅医療では、患者毎に組む訪問看護ステーションやケアマネが異なり、自らが所属する法人とも異なることも、今更気づきました(笑)。へき地とは別の意味でコミュニケーションに注意しなければいけません。

⑤ 診療報酬
当初は消極的でしたが(笑)、診療報酬を勉強をしました。診療報酬を知ることで、何にインセンティブが与えられているのか、医療政策の意図を汲み取ることができることに気づきました。例えば24時間365日対応してほしい、在宅看取りをしてほしい、そのためにはグループ診療体制をつくってほしい、等々。
ただ1つ気になったのは、卒後6年目の医師が診療報酬や経営について学ぶのは一般的なのでしょうか?早く管理職になるプライマリ・ケア医は早く管理職になることが多いので仕方がないのですが、後期研修が終わって大学院に入学する同期もいるわけで、経営の勉強にあてる時間を臨床や研究に当てたい気もしなくもないです。

総じて、非常に濃い3ヶ月間になりました。特に地域医療のススメはへき地を中心に研修をする機会が多いと思うので、シティ・タワー診療所をローテートすると研修不足な部分を補完することができると思います。
今年度からは在宅医療専門医がとれるフェローシップが始まったので、後期研修を修了した卒後6~7年目の家庭医の働く場としてもオススメだと思います。

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1 コメント:

Unknown さんのコメント...

田中先生
研修のご報告ありがとうございます。シティータワー診療所での在宅診療だけでなく、医療制度、診療報酬の勉強もできたとのこと、非常によかったと思います。今までの研修の経験をいかして、さらにその上に新しい学びを積み上げられたこと、すばらしいと思います。
6年目で経営について知ることは早すぎることはないと思います。これもまた先生の今後につながっていくと思いますよ。

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