2012年5月22日火曜日

大腿骨頸部骨折


地域医療のススメ S3研修医横田修一です。
 昨年、岐阜県揖斐川町の久瀬診療所というところで研修をしました。
その時に施設で転倒する高齢者を多く見ましたが、骨折の画像評価が自分でできなかったことや、初期対応でどのようにすればよいかわからなかった経験から、研修最後の1年の2か月間を整形外科の研修にあてました。
 ローテーション初日、病棟に行くと早速大腿骨頚部骨折の95歳のお婆ちゃんに出会いました。指導医は「この患者さんに手術をしないことも選択肢のひとつです。」という説明をご家族にされたのですが、その説明が終わった後で私が指導医に、「ではもし手術をしなかったとして、疼痛が緩和されるまでの期間でどのような治療をすればよいのでしょう?」と質問しました。実際に施設では手術を選択しなかった患者さんをケアすることが多く、その際には体位交換や車いす移乗の際に患者さんが強い痛みを訴え、その対応に施設職員が苦慮するからです。質問を受けた指導医はちょっとびっくりしたような表情をされて、「なるほど、そういう質問は面白いね。」とコメントをいただきました。結局は薬物で除痛をし、複数人数で移乗を行って動きを最小限にするということのようでした。
 さて、このようなやり取りがあった週の週末、後期研修医の会合がありました。この会合は、私たちが年に3回(4月、10月、1月)集まり、年間の目標設定、中間振り返り、ポートフォリオ発表会などを開催しています。個々の研修の現状を発表する中で、私は出会った大腿骨頚部骨折のお婆ちゃんの話をしました。すると久瀬診療所でお世話になった指導医から、このお婆ちゃんが退院した後の転倒予防はどうなるのだろうか?あるいはこの人が帰る地域での転倒予防や施設での取り組みはどうなっているのでろうか?というところに視点を広げる家庭医療の世界につながるかも・・・というフィードバックが帰ってきました。
 正直ちょっとはっとしました。目の前の骨折患者さんの診断ができる、治療ができるということから、患者さん全体のこと、ひいてはこのひとの住む家庭や地域の問題に目を向けるということがまさに私たちプライマリケア医が目指すところなのだと再認識されました。
 とても重要な専門家研修、でもその中でも常に地域の中の医師としての視点を忘れない。これからもがんばっていこうと勇気づけられました。

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