2012年5月24日木曜日

地域医療のススメ S3研修医横田修一です。
 昨年、岐阜県揖斐川町の久瀬診療所というところで研修をしました。
その時に施設で転倒する高齢者を多く見ましたが、骨折の画像評価が自分でできなかったことや、初期対応でどのようにすればよいかわからなかった経験から、研修最後の1年の2か月間を整形外科の研修にあてました。
 ローテーション初日、病棟に行くと早速大腿骨頚部骨折の95歳のお婆ちゃんに出会いました。指導医は「この患者さんに手術をしないことも選択肢のひとつです。」という説明をご家族にされたのですが、その説明が終わった後で私が指導医に、「ではもし手術をしなかったとして、疼痛が緩和されるまでの期間でどのような治療をすればよいのでしょう?」と質問しました。実際に施設では手術を選択しなかった患者さんをケアすることが多く、その際には体位交換や車いす移乗の際に患者さんが強い痛みを訴え、その対応に施設職員が苦慮するからです。質問を受けた指導医はちょっとびっくりしたような表情をされて、「なるほど、そういう質問は面白いね。」とコメントをいただきました。結局は薬物で除痛をし、複数人数で移乗を行って動きを最小限にするということのようでした。
 さて、このようなやり取りがあった週の週末、後期研修医の会合がありました。この会合は、私たちが年に3回(4月、10月、1月)集まり、年間の目標設定、中間振り返り、ポートフォリオ発表会などを開催しています。個々の研修の現状を発表する中で、私は出会った大腿骨頚部骨折のお婆ちゃんの話をしました。すると久瀬診療所でお世話になった指導医から、このお婆ちゃんが退院した後の転倒予防はどうなるのだろうか?あるいはこの人が帰る地域での転倒予防や施設での取り組みはどうなっているのでろうか?というところに視点を広げる家庭医療の世界につながるかも・・・というフィードバックが帰ってきました。
 正直ちょっとはっとしました。目の前の骨折患者さんの診断ができる、治療ができるということから、患者さん全体のこと、ひいてはこのひとの住む家庭や地域の問題に目を向けるということがまさに私たちプライマリケア医が目指すところなのだと再認識されました。
 とても重要な専門家研修、でもその中でも常に地域の中の医師としての視点を忘れない。これからもがんばっていこうと勇気づけられました。

3 コメント:

「地域医療のススメ」研修生 さんのコメント...
このコメントは投稿者によって削除されました。
「地域医療のススメ」研修生 さんのコメント...

施設にいた手術をしなかった患者さんの話。とても興味深いですね。手術しないと、介助のたびに痛いんですね。頸部骨折の手術をするかどうか。高齢でも、寝たきりでも、介助のときに痛みが出ないように手術したほうがいいのかなぁ?もちろん、個々の事例によるんでしょうが。この95才のおばあさん、どうしたのかまた教えて下さい。
地域の診療所、老人保健施設、整形外科病棟。いろいろな場で、頸部骨折の患者さんを診た横田くんが、超高齢者の頸部骨折手術について、どう思うか、聞いてみたいですね。私も参考にしたいです。
私の地域で似た事例があったら、病院に送り出すときに、整形外科に完全にお任せでなく、そのあたりの意見も持っておきたいものです。(まぁ、お任せという側面は強いのですが)
地域で経験した後に、臓器別専門研修を受けるというのは興味深いですね。
また、揖斐で会いましょう
修了生 太田

日本プライマリ・ケア連合学会若手医師部会 さんのコメント...

手術をしない頚部骨折をどう診るか。なかなか興味深いところですね。圧迫骨折は昔は暫く安静にして、それからすこしずつ動かすというのが、最近は誤嚥性肺炎などの合併症を考慮して早めから離床を進めて居ることが多くなってきているようですよね。頚部骨折も疼痛を如何にコントロールしつつ、褥瘡・誤嚥性肺炎・廃用を防いでいくかが鍵になるんでしょうね。 十勝の三浦

コメントを投稿