2018年11月4日日曜日

神津島での研修

 地域医療のススメ S2田所と申します.
6月にS3の海永先生もブログに書いていた,神々の集う島,神津島診療所に私も7-9月の3ヶ月間勤務しました.それについての報告をさせて頂きます.
島の概要や,文化については海永先生の投稿を見ていただければ分かると思いますので割愛させて頂きます.

私の行った7-9月は,夏真っ盛りで,かなりの人数の観光客が訪れる季節です.神津島の主産業としては,漁業,そして民宿業であるため,島民にとっても繁忙期である3ヶ月です.
神津島の綺麗な海
 そのため,午前で30-50人前後の島民の診察+観光客の受診があり,かなり大変でした.紙カルテに記載する暇もないくらいであり,全て勤務が終わるのが午前3-4時になることもありました.
また,専門医がおらず,文字通り何でも診る,総合診療を体現していることから,今までは他科にお願いしているような処置,診察を行う毎日であり,大変でしたが,その分自分のスキル向上になったと強く思います.

具体的には,眼科で使用する細隙灯の使用,骨折の固定や,肩こり,腰痛に対する筋膜リリース,ステロイド局注,皮膚生検,KOH, 粉瘤や良性腫瘍の手術,縫合,漢方などです.

特に縫合については,夏であるため軽装であったり,観光客が多いことから(神津島は急勾配な道が多く,バイクでの移動する観光客が多かったため),件数が多く,ほぼ毎日1-2件は縫合していました.
中には,損傷がひどく50針近く縫合した症例や,畳針を踏んでしまって5mm幅,4-5cm針が足底内に迷入してしまい摘出した例,腱断裂まで至っており,Kessler法を用いて腱縫合をした例など,様々な症例がありました.
個人的に一番勉強になったのは漢方でした.もう一人の医師が漢方を得意としていたことから,診察や処方などを教えてもらいながら,診療に取り入れました.

不定愁訴の患者さんに対して,アプローチが難しいことがこれまでにも多々あり,マネジメントの困難さを痛感しておりましたが,実際漢方を使用することで,慢性の下痢や,全身倦怠感,のぼせ,ほてりなど,改善を認める患者さんも多く,「ありがとう」と喜んでいる姿をみると本当に嬉しくなりました.

また,ヘリ搬送の件数も多く,肝膿瘍のpresepsis,特発性血気胸,上部消化管出血,脳梗塞,CPA ROSC後など,多岐に渡りました.
特に脳梗塞については,断崖絶壁で体動困難になってしまったため,どうしても診療所に運ぶことが出来ずに,現場に医師,看護師が向かって,診察,初期治療,搬送の適応を決めるという今までに前例のない症例であり,現場での迅速な判断の難しさを実感した症例でした.

その他搬送の適応になるか,ならないか,狭間の症例も多かったですが,後方病院の専門医の先生の意見を伺いながら,なんとか,医師2人でやりきることが出来ました.

それ以外にも,透析のマネジメントや,特別養護老人ホームへの週1回の往診など,自分の力で責任を持って行っていかなければいけない状況でしたが,看護師さんたちを含めたスタッフの方々の力添えにより,乗り切れたと思います.

島民の方々も,皆優しく,中には私を指名して受診をしてくれたり,魚や染物,編み物,野菜などを差し入れしてくれたり,温かく受け入れてくれました.
そんな中での毎日であったため,3ヶ月はあっという間に過ぎ去って行き,本当に名残惜しかったです.

離島での医療というなかなか経験できないようなことをさせていただいて,本当に感謝しております.ありがとうございました.
大好きな患者さんが,私への餞別にと作ってくれた千羽鶴.残念なことに,彼女の形見となってしまいましたが,大切に今でも家に飾っています.


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