専攻医1年目、西吾妻福祉病院で総合診療研修中の小林聡史と申します。
先日プログラム責任者の井上先生にサイトビジットでお越しいただきました。
外来の様子を見てもらったフィードバックなど、非常に勉強になりました。
井上先生ありがとうございました。
さて、今回の投稿は論文を2つご紹介いたします。
私が一人で読んだものなので、結果の解釈に不十分な点があるかもしれませんご容赦ください。
①JT wright, et al, A Randomized Trial of Intensive versus Standard Blood-Pressure Control, N Engl J Med. 2015; 373:2103-2116
高齢者も含め比較的心血管リスクが高い人に対して、降圧目標をどの程度にすればいいかを検討したスタディです。
P 50歳以上でSBP130-180の方のうち、糖尿病・脳梗塞以外の心血管リスクがある人
*糖尿病・脳梗塞以外の心血管リスクとして、以下の1つ以上を満たすことが挙げられています。臨床的または無症状な心臓血管疾患
慢性腎臓病(多発性嚢胞腎以外で、eGFR20-60)
Framingham risk scoreで心血管10年リスクが15%以上
75歳以上
E SBP<120を目標とする群(Intensive treatment)
C SBP<140(130-139)を目標とする群(Standard treatment)
O primary:心筋梗塞、ほかのACS、脳梗塞、心不全、心血管死の結合アウトカム
secondary:個々のアウトカム、全死亡、primary+全死亡の結合アウトカム
・ランダム割り付けされている。割り付け方法はわかりませんでした。
・Baselineはおおむね同等:平均67.9歳、75歳以上が28.2%
・ITT解析されている
・追跡率89.4%、追跡期間は平均3.26年
(5年間の目標だったが思ったより差が出たため早めに打ち切りとなった)
・マスキングはなし
・サンプルサイズは十分
結果は以下です。
Primary outcomeは有意にIntensive treatment群で減少しています。
(計算すると、NNTは62.5でした)
Secondary outcomeで有意差があるのは心不全、心血管死、全死亡、Primary outcomeまたは死亡の4項目です。
高齢者であっても、Intensive treatment群のほうが予後を改善するという結論になっています。
この論文の適用に当たり注意すべきこととしては、
・副作用としてAKI、低血圧、電解質異常(低Na、低K)が多いこと
・介護を必要とする高齢者は含まれていないこと
・長期間使用での腎機能への影響は不明であること
・糖尿病や脳卒中の既往がある方は含まれていないこと
・Intensive treatment群では降圧薬の使用量が多い(Intensive treatmentは平均3剤、Standard treatment群は平均1.9剤)ため、アドヒアランスの低下が起こりうること
・拡張期血圧の目標値に関しては記載がないこと
などが挙げられるでしょうか。
JNC8で60歳以上は降圧目標を150/90にするといったことが言われていたので、この論文をどう臨床に応用するかは難しいところかと思います。
SBP120を目標にするのは大変かなと思い、間をとって130/80くらいを目標にしようかな などと考えています。
このStudyの結果を皆さんはどのように適用されるのか、ご意見を是非伺いたいです。
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②Yang, Jeng-How et al, Predictive symptoms and signs of laboratory-confirmed influenza, Medicine. 2015 Nov;94(44):e1952.
成人のインフルエンザ患者の、問診や迅速検査の診断精度に関して検討したスタディです。
P:台湾の2つの都市部で、インフルエンザの流行期に18歳以上の成人で上気道症状を呈して外来クリニックを訪れた人
(上気道症状:発熱、咳、寒気、頭痛、倦怠感、咽頭痛、鼻汁、鼻閉、筋肉痛の1つ以上)
平均33歳、基礎疾患を持つ人の割合も10%程度
E:各症状や問診(統一された質問票)、RIDT(迅速抗原検査)
C:RT-PCR(リアルタイムPCR)and or 培養
O:インフルエンザ診断の精度
・Reference standardとしてPCRや培養は適切と思われます。
・ExposureとComparisonは互いに独立して評価されています。
・Exposure、Comparisonともに再現性も問題ないと思われます。
Reference standardと問診は全員に実施されています。
迅速検査は実施されていない人もいます(臨床判断でするかしないかを決定した?)
結果は以下です。
発熱、咳と、咽頭痛、くしゃみ、soreness(痛み、苦痛といった意味のようですが、どこの痛みのことなんでしょう?)などの組み合わせが有用なようです。
私個人としてはインフルエンザの人がくしゃみをしてるイメージはあまりないんですが、皆さんどう思われるでしょうか。
咳のNLRが0.1(0.02-0.42)であり、咳がない場合には可能性はかなり下がるようです。
迅速検査(RIDT)も陽性・陰性尤度比ともにそれなりに有用なようですが、前述のとおり全員に実施されているわけではないので、選択バイアスの問題で過大評価されている可能性はあるかもしれません。
2つの論文を紹介しましたが、ご意見ご感想などあれば是非お願いいたします。
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1 コメント:
小林先生
湯沢町保健医療センター井上です。先日のサイトビジットお疲れ様でした。
サイトビジットの報告は、次回の外来のお手伝いの後にまとめて書こうと思っていて遅れています。すみません。
さてお忙しい中2つの論文についてのご紹介ありがとうございます。
一つ目の論文の収縮期120以下という目標はなかなか厳しいですね。実際の現場で処方していると相当薬の種類が必要な人が増えそうだなあと個人的には感じています。
先生のおっしゃる通りJNC8で高圧目標の数値が上がり、いろいろと議論が起こっているところのようですね。
私個人としては、低めを目指すが、個人の内服に対する要望などを考えてちょっと様子をみようかなと思ったりしています。
インフルエンザも今流行中なのでトピックですね。皆さんの地域ではどうなのでしょうか?迅速検査のなかった時代から診療をしている私なんかは、迅速診断ができて良かった面もあり、よろしくない面もあると感じています。
この臨床症状に、周囲の流行状況とか予防接種の有無なんてのが加わるとより迅速検査なしでも正確な診断につながるのではないかななんて思いました。
再来週にまた西吾妻にお邪魔します。よろしくお願いします。
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