2017年6月7日水曜日

東京ベイER: ”あおいくま”との3ヶ月

 こんにちは.ススメS2になりました上柴です.12ヶ月の練馬光が丘病院GIM研修を経て、4月から3ヶ月間の救急研修を東京ベイERで行わせて頂いております。以下、文系出身で(のに?!)思いが溢れて長文ですがお許し下さい(笑)。

東京ベイを知ったのは、医学部4年性の時に遡ります。JADECOM奨学生として参加させて頂いた女川町立病院東日本大震災支援の時でした。
2011年3月下旬、余震で割れそうな窓ガラスに囲まれながら寝袋が寄せ集まった医局で、女川町の復興の話の延長上に、震災による液状化現象で再開発が難航している浦安の病院の名前が上がりました。日米から支援に来られた先生方が、何とか国際基準の内実共に新しい、従来の日本には無かった理想の病院を作りたいと話されており、その熱気からすごい病院ができるんだと強く印象に残っていました。今回その病院でローテできる事となり、密かに感動しながら4月を迎えました。

 病院全体の特徴として“あおいくま”・ERの特徴として“帰宅指示書”があるのでそれらについて書かせて頂きます。
“あおいくま”は東京ベイの病院理念で、“あせるな・怒るな・威張るな・腐るな・負けるな”の頭文字からなっているそうです。344床で年間救急車搬送8000台以上、救急車応需率95%以上という36524時間断らないERの病院にあって、この理念を実行されている先生方にお会いできる事が非常に貴重と感じています。救急指導医の先生方は忙しい時でも縫合やシーネ固定等どんな基本的な事も丁寧にご指導下さり、家庭医としてもう1度こういった基本手技を学びたかった身には非常に有難い環境です。またベイの救急コースの同期は、様々なCriteria(例えば小児頭部外傷へのCT適用のPECARN Ruleなど)を使用する際、Inclusion Criteriaまできちんと考慮する姿勢があり、忙しさを言い訳に質を落とさないprofessionalismが感じられ刺激を頂いています。また、 マルチプロブレムの症例をどんなに沢山入院でお願いしても嫌な顔1つせず対応下さる内科の先生方、他各科専門家の先生方もオンコールに爽やかかつ穏やかに対応して下さいます。更に、コンサルトした後の患者さんの転機について折に触れフィードッバック頂けるのは非常に良い振り返りとなります。

 ベイには“帰宅指示書”という患者様へのお手紙があります。疾患の概要、帰宅後の注意事項と再受診のポイントが書かれた紙で、他の救急病院でも決して珍しいものでは無いかもしれません。ただベイの指示書は40疾患分にも上り、かなり充実しています。北米型で、訴訟回避・リスク管理能力への意識が高いという見方ができると思います。その一方で、適切な管理や予想される臨床経過の具体的な情報提供は、余計な再受診の回避と共に本人の不安軽減に非常に重要であるのも事実で、患者さんの生活への目線という特徴もあると考えます。実際、患者様に初期の迅速な蘇生行為プラスで必ず「大変でしたね」の声かけを行うER医の姿からはそんなベイERの特徴としてのプライマリマインド?の様なものを感じます。また、生活への視点という点では受診を契機に禁煙指導まで結びつけたり、インフルエンザ検査の執拗な希望の裏に子育て不安を考えたり、虐待を考えたりといった主訴の根本的な問題まで視野に入れての対応を目指されていると指導医の先生から伺う事がありました。
社会のどんな立場の人も飛び込めるERの強みを考えればこういった活動の積み重ねが社会全体の健康のボトムアップにも繋がり得るのではと、ベイERに懐の深い救命救急を感じています。

とはいえ緊急対応を同時進行で求められる様な忙しい現場の中では、当然こういった長期的視点を持つ活動の限界を思い知ります。例えば糖尿病家系でありながら若くしてコントロール困難でDKAとなってしまった患者様や1度もカウンセリング受診もなく追い詰められて入室するなり涙を流される患者様など予防医学・長期的フォローの点で、僻地に限らず都市部でも家庭医が動ける余地があるのではと、再認識しました。

光が丘に引き続き、マルチタスクが苦手な自分にも根気よく、温かく支えて
下さったベイERの皆さまに感謝致します。残り数週間、「あせるな・威張るな・負けるな」を特に気をつけて、小児科に強い家庭医目指して精進を続けます。




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1 コメント:

井上陽介 さんのコメント...

上柴先生

湯沢町保健医療センター井上です。
“あせるな・怒るな・威張るな・腐るな・負けるな”ですか。いい病院理念ですね。普段の業務や研修において気をつけなければいけないことだと思います。
一つ一つの基本を積み重ねて行くことは時間がかかったり、遠回りするような気がしますが、目標到達の一番の近道だと思います。
先生の中で救急以外にも多くのことを学んでおられるのではないかと思います。救急の研修の中で基本をしっかりと積み上げて、次の研修に進んでください!

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